研究課題/領域番号 |
19K22789
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
外崎 明子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 国立看護大学校 成人看護学 教授 (20317621)
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研究分担者 |
田畑 耕治 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 准教授 (30453814)
大村 英史 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 講師 (90645277)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性呼吸器疾患 / 急性増悪 / 肺音 / 気道分泌物 / ロンカイ / セルフモニタリング / 音響学 |
研究実績の概要 |
本年度は既存データベースICBHI2017(International Conference on Biomedical Health Informatics)を活用し、実施した。呼吸器疾患の肺音では副雑音が聴取され、連続性と断続性ラ音に大別される。連続性ラ音は音響的に高音特徴があり、これを検出する先行研究があるが、連続性ラ音の一種であるロンカイ(rhonchi)と他の連続性ラ音(wheezes、以下ウィーズ)ではその音響的差異判定が難しく、ロンカイに着目した先行研究は少ない。ロンカイは感染症併発時の気道分泌物貯留で起こる「いびき様音」である。 (大村と研究協力者・青柳裕介により)本研究では、短時間フーリエ変換を用いて肺音データをスペクトログラムに変換し、平滑化したスペクトルから極大値を抽出し、連続性ラ音の音程の候補周波数ピークを検出した。そしてロンカイはウィーズに比べ低音で、かつ音程の変化が小さいという特徴があることより、これらを比較する為の閾値を設定するという手法を用いた。 この手法の有効性評価実験として、ロンカイとウィーズを混在させたデモンストレーション音源(以下、デモ音源)をICBHI2017のデータベースより抽出して作成した。これを急性期病院在職中の看護師8人を対象に、識別精度を以下のように(主に外崎、研究協力者・鈴木美穂子による)検証した。デモ音源をWeb上に格納し、これをダウンロードして聴取させ、2音の区別をWebアンケート・アプリケーションで回答させ識別力の判定を行った。この結果、音程の変化の閾値を設定することで精度が向上し,音程の変化によりロンカイとウィーズを分類する手法が有効であると推測できた。この成果は、慢性呼吸器疾患患者の増悪要因である感染症併発時の肺音変化の早期検出を可能とし、次年度以降、在宅療養患者の早期受診を促す支援システムの開発に応用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年1月下旬に全世界的に発生したCovid-19の感染拡大は、令和2年度内にも一向に収束する兆しが見えず、緊急事態宣言が繰り返し発令された。院内感染予防の観点より呼吸器疾患を有する患者に対して、研究データ収集の依頼ために接近することは、当面不可能であり、可能となる時期の予測も立たないため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した既存の肺音データベースを使用して、音程の変化によりロンカイとウィーズを分類する手法の有効性が確認できた。この成果は、慢性呼吸器疾患患者の増悪要因である感染症併発時の肺音変化の早期検出を可能とし、次年度以降、在宅療養患者の早期受診を促す支援システムの開発に応用できる。 令和3年度は、慢性呼吸器疾患の患者のセルフモニタリングとして肺音収集を可能とする収音装置を用いて、肺音の変化、そのほかの身体徴候変化(バイタルサイン、経皮的酸素飽和度等)を記録するセルフモニタリング・ツールの開発をめざし、このツールの使用によるセルフケア支援効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の論文公表のための経費が研究の遅延により使用できなかった。また、Covid-19の影響によって、研究メンバーの教育業務は、頻繁にその内容や提供方法を変更する必要に迫られ、研究のためのエフォートが大きく低下し、予定していた研究が遅延し、機材の購入費やシステム開発費が使用できず、次年度繰り越しとなった。次年度は大学院生等の研究協力者の協力を得ながら、予定の計画の遂行に努める。
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