研究課題/領域番号 |
19K22789
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
外崎 明子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 国立看護大学校 成人看護学 教授
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2022
|
キーワード | 慢性呼吸器疾患 / 急性増悪 / 肺音 / 気道分泌物 / ロンカイ / セルフモニタリング / 音響学 |
研究実績の概要 |
大村と研究協力者・青柳裕介は、ロンカイ検出手法をシステムに実装を行った。システムにはiOSおよびAndroidのTabletで処理を行い、肺音は聴診器デジタル化ユニットネクステートを経由し取り込んだ。さらにこのシステムの動作検証を行った。 外崎、研究協力者・田中芳治と鈴木美穂子は、慢性呼吸器疾患患者のセルフケア能力の向上に寄与する日常生活内の行動変容支援に関する文献検索 (システマティクレビューとメタアナリシス)を実施した。 田畑は、セルフモニタリングシステムによって収集されるデータを解析するための方法論の研究を行った。本研究で収集されるデータの多くがカテゴリカルデータであるため、複数の変数間の関連を調べるために分割表解析は有用な方法の一つである。そこで、分割表の主対角セルにも制約をもつ統計モデルの提案とその適合度検定、モデルの分解に関する定理を与えた。また、昨年度に開発した「肺音からロンカイを検出する手法」の検証のために作成されたデータセットから、複数の評価者の一致度に関する研究も行った。この研究が進めば、肺音聴診の教育に利用できる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、在宅療養中の肺がんやCOPD患者の肺音について患者による自己録音データを自動分析し、これと患者の身体症状セルフ・モニタリング結果を統合し、異常判別を行うセルフ身体診査支援システムを構築する。本システムは、(1)肺音の音声情報について異常音を判別し、さらに肺音をTablet画面に表示する可視化システム、(2)(1)の分析結果とバイタルサイン、患者自覚症状との関連性に基づき、受診必要時にアラートを表示するセルフ・モニタリング結果判別システムを開発する。(1)のシステムは、昨年度の研究結果をシステムに実装するところまで進んでいる。外崎、研究協力者・鈴木美穂子は、肺音を波形としてTablet画面上に表示し、可視化できるシステムの動作確認を行い、在宅における肺音の自己録音と遠隔送受信が可能であることを確認した。(2)のシステムは、先行研究で用いたシステムの改良で構築される。外崎、研究協力者・鈴木美穂子は文献検討を行い、バイタルサイン(経皮的酸素飽和度等)、痰の色や頻度、自覚症状スコアなど増悪を早期に検出するためのセルフモニタリング項目の選定を行い、システムへ実装するところまで進めている。したがって、呼吸器疾患を有する患者に対して、研究データを収集するための準備はほぼ整っている。しかし、令和2年度から続くCovid19の影響により、院内感染予防の観点より呼吸器疾患を有する患者に対して、研究データ収集の依頼のため接近することは難しく、データの収集とシステムの効果・検証に関する部分に遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
「(1)肺音の音声情報について異常音を判別し、さらに肺音をTablet画面に表示する可視化システム」を実際に稼働させ、COPDの診断がついている複数の成人を対象にデータを取得することを計画している。これにより、在宅で療養中の呼吸器疾患を有する患者からデータの取得が現実的に可能かどうかの最終確認を行う。また、「(2)(1)の分析結果とバイタルサイン、患者自覚症状との関連性に基づき、受診必要時にアラートを表示するセルフ・モニタリング結果判別システム」も実際に稼働させ、こちらも複数のユーザに対して試験的に正しくアラートが出せるかどうかの検証を実施する。上述の試験がクリアされたら、実際に呼吸器疾患を有する患者に対して、研究データ収集の依頼を実施する予定である。その際には、システマティック・レビューの結果を用いた行動変容支援を同時に行い、セルフケアを向上するよう患者指導を行う。さらに、収集されたデータを用いて、システムの有効性の検証、セルフ・モニタリング結果を出力する統計モデルの調整、バイタルサインと患者自覚症状の関係に関する統計解析などを実施する予定である。 現在作成しているシステムは、豊富なデータが手に入る状況を前提に作成されている。今後、判定の精度を高めるためにはデータの追加が必要である。しかし、昨今の状況によりデータが手にはいらない可能性もある。このようなデータが少ない場合でも精度が上がるような方法論を確立していく必要もある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の論文公表のための経費が研究の遅延により使用できなかった。また、Covid19の影響によって、研究メンバーの教育業務は、頻繁にその内容や提供方法を変更する必要に迫られ、研究のためのエフォートが大きく低下し、予定していた研究が遅延し、機材の購入費やシステム開発費が使用できず、次年度繰り越しとなった。次年度は大学院生等の研究協力者の協力を得ながら、予定の計画の遂行に努める。
|