研究課題/領域番号 |
19K22796
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
前田 清司 筑波大学, 体育系, 教授 (30282346)
|
研究分担者 |
樽味 孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40825858)
田中 喜代次 筑波大学, 体育系, 名誉教授 (50163514)
山縣 邦弘 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90312850)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | スポーツ腎臓 / 高強度運動 / 虚血耐性 / 尿細管障害マーカー / フルマラソン |
研究実績の概要 |
継続的な高強度の持久性運動トレーニングは身体(臓器)に様々な構造的・機能的な適応を引き起こすことが知られている(スポーツ心臓など)。一方で、高強度運動時には、血流再配分の影響で骨格筋への血流量は増加するが、腎臓などの末梢臓器への血流量は顕著に低下することが知られている。こうした高強度運動時における腎血流量の低下は一過的な反応ではあるが、日頃から継続的に高強度の持久性運動トレーニングを実施しているアスリート(持久性アスリート)では、一過的な腎血流量の低下が繰り返されることで腎臓に何らかの生理的適応(虚血耐性など)が生じている可能性が考えられる。しかし、これまでに高強度持久性運動トレーニングによって腎臓にどのような生理的適応が生じているかは全く明らかにされていない。そこで本研究では、高強度持久性運動トレーニングに伴う腎臓の生理的適応を探索することを目的とした。 本年度の研究では、まず健常成人における高強度運動が腎臓に及ぼす急性的な影響を検証した実験のデータ解析を行った。その結果、自転車エルゴメーターを用いた漸増最大負荷(高強度)運動の直後に尿細管障害マーカーである尿中L型脂肪酸結合蛋白値が急性的に上昇することが明らかになった。さらに、その上昇率は運動の強度や個々の腎機能に比例することも示された。加えて、若年男性におけるフルマラソン(高強度運動)が腎臓に及ぼす急性的な影響を検証する実験を実施した。その結果、自転車エルゴメーターを用いた漸増最大負荷(高強度)運動の結果と同様に、フルマラソン後(直後、2時間後、24時間後)において尿中L型脂肪酸結合蛋白値が急性的に上昇することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、健常成人における短時間の高強度運動が腎臓に及ぼす急性的な影響を検証した実験のデータ解析および若年男性におけるフルマラソン(長時間の高強度運動)が腎臓に及ぼす急性的な影響を検証する実験をそれぞれ実施した。その結果、自転車エルゴメーターを用いた漸増最大負荷(高強度)運動およびフルマラソンは、いずれも尿細管障害マーカーである尿中L型脂肪酸結合蛋白値を急性的に上昇させる可能性が明らかになった。したがって、本年度は当初の実施計画通りに研究を遂行して一定の成果が得られていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、若年男性におけるフルマラソン(長時間の高強度運動)が腎臓に及ぼす急性的な影響を検証する実験のデータ解析をさらに進め、高強度運動が腎臓に及ぼす急性的な悪影響のメカニズムを明らかにする予定である。さらに、日頃から継続的に高強度の持久性運動トレーニングを実施しているアスリート(持久性アスリート)の腎臓に何らかの生理的適応(虚血耐性など)が生じているか否かを探索する観察研究を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究では、若年男性におけるフルマラソン(長時間の高強度運動)が腎臓に及ぼす急性的な影響を検証する実験を実施し、その解析の一部まで行った。しかし、他業務の関係で全ての解析(特にメカニズムの解析など)が行えなかったため、次年度使用額が生じた。 当該助成金と翌年度分として請求した助成金は、若年男性におけるフルマラソンが腎臓に及ぼす急性的な悪影響のメカニズムを明らかにするための追加のデータ解析などに使用する予定である。
|