研究課題/領域番号 |
19K22799
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安 ち 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (70747873)
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研究分担者 |
淺間 一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50184156)
宮井 一郎 社会医療法人大道会(神経リハビリテーション研究部), 神経リハビリテーション研究部, 部長 (60510477)
服部 憲明 社会医療法人大道会(神経リハビリテーション研究部), 神経リハビリテーション研究部, 研究員 (70513141)
下田 真吾 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, ユニットリーダー (20415186)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 手すり / 起立動作 / 片麻痺 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では脳卒中や脳梗塞後の片麻痺患者を対象に,起立動作中の手すりにかかる力を計測することができる手すりを開発し,手すりにかかる力から使用者の運動機能を推定する手法を確立することを目的としている.2021年度までの研究では片麻痺患者15名に研究に参加してもらい,1-2か月おきにのべ32回の計測実験を行った.使用者の運動機能は臨床で用いられているFMAと呼ばれるスコアをもとに重度か中等度な運動障害を有しているとした. 手すりにかかる水平方向の力においてピークの力の大きさや手すりにかかる平均の力,ピークを取る時間,手すりに大きな力がかかり始める時間などの特徴量を算出し,これらの特徴量から使用者の運動機能が推定できるか機械学習のモデルから検証した.その結果として,使用者の運動機能を80%以上の正解率で判定できることが分かった.またリハビリテーションを経て運動機能が改善している患者においてはそれらも正しく推定できることが分かった. このことから,今までは運動機能を理学療法士などが判定していたのに対して,本システムでは手すりを用いて数回の起立動作を行うのみで運動機能の判定が行えるという優位性を有する.またこのように自身の運動機能の改善の度合いや回復の過程を患者自身が簡便に知ることができるため,リハビリテーションに対するモチベーションが向上することが期待される.今後はさらに運動機能の詳細な診断や患者に合わせたリハビリテーションの提案が行えるようにしていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度では2020年度までに片麻痺患者において計測した手すりにかかる力から運動機能が推定可能できるかを検証した.その結果として15名の片麻痺患者が複数回参加した実験データから運動機能の変化を推定できることを示した.この結果はリハビリテーション分野におけるトップジャーナルに採択され,高い評価を得ている.また現在は臨床現場でも簡単に使用できるようにタッチパネルやIDカードで管理が行えるように,システムのインターフェースを開発しており,研究課題は順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は研究者が常に臨床現場にいなくても医師や療法士のみでも簡単に操作が手すりによる運動計測が行えるようにシステム開発を行う.現在新たに整形外科クリニックとの共同研究も進めており,ここでは本研究が対象としていた脳卒中や脳梗塞後の片麻痺患者だけではなく,要支援や要介護の高齢者を対象に実験を行い,より幅広い人に対して運動機能の推定を行えるようにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大のため,予定したように計測実験が進まず次年度の使用が生じた.
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