恒温動物のシステムは厳密にコントロールされた温度下において成立する.わずか1度の温度変動も生体においては大きな影響をもたらす.そのため生体内の温度をできるだけ精密に,素早く評価できるモデルの開発は多くの研究対象となってきた.近年,細胞内の温度を測定する蛍光プローブ分子やタンパク質が考案された.しかしながら,培養細胞への応用にとどまり,ダイナミックに動く生体内の筋細胞に応用した事例は限定的である.本研究は生理的な条件下での,骨格筋細胞の収縮弛緩サイクルにおける細胞内温度変化を温度感受性蛍光プローブ によって評価した. その結果,筋細胞の熱動態をin vivoイメージングによって評価する実験モデルの構築に成功した.この実験モデルによって,細胞質内のカルシウムイオン調節機構を担う細胞小器官である筋小胞体が,収縮ー弛緩サイクルの筋温変化に重要な役割を持つことが明らかにされた.このとき,ミトコンドリアのATP合成を阻害は,細胞内の温度低下を誘発することが示された.
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