研究課題
持久的競技のアスリートでは,換気量および呼吸筋活動の増加よる呼吸困難感の増大や,呼吸筋の疲労由来の代謝受容器反射を介した末梢血管収縮および過度の血圧上昇が,全身持久性パフォーマンスの低下を招くことが知られている.これらの呼吸困難感および呼吸筋疲労の軽減を目的として,横隔膜を代表とする吸息筋をターゲットとし,安静時で吸気抵抗を負荷する呼吸筋トレーニングが行われることがある.しかしながら,この方法は実際の全身持久性運動時の呼吸筋活動とは異なり,吸気筋のみを対象とし,筋の収縮スピードは遅い(ゆっくりした呼吸)もので,その理論は裏付けされておらず,またパフォーマンス向上についても統一した結果が得られていない.実際の運動時には吸息筋のみならず呼息筋の活動も大きく,筋の収縮スピードも速い(はやい呼吸).そこで本申請研究では,運動時の呼吸をシミュレートした吸気抵抗を用いない呼吸筋トレーニングの開発を目的とした.1.呼吸の漸増負荷テスト:最大随意換気量の30%より1分ごとに5%ずつ換気量を増加させた.設定した換気量が維持できなくなった時点でテスト終了とした.随意過換気中の酸素摂取量を測定し,テスト中に得られた最も高い値を呼吸筋の最高酸素摂取量(VO2peakRM)とした.2.呼吸のインターバルテスト:VO2peakRMを基準に,40%および100%VO2peakRMの換気量を算出し,40%にて2分,100%VO2peakRMにて3分の随意過換気を5セット(合計25分)行った.テスト前後に吸息筋疲労の指標として,最大吸気口腔内圧を測定した.テスト後に有意な最大吸気口腔内圧の低下すなわち呼吸筋疲労が認められた.本研究の結果から,呼吸筋の最高酸素摂取量を基準としたインターバルプロトコールは,新しい呼吸筋トレーニングプロトコールとして有効であることが示唆される.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Respiratory Physiology & Neurobiology
巻: 296 ページ: 103812~103812
10.1016/j.resp.2021.103812