新規に合成されたタンパク質は局在化されることによってはじめて機能を発揮することができる。骨格筋が太く強くなるためには既存の筋原線維へ新規に収縮フィラメントが追加(筋原線維形成)される必要があるが、近年筋原線維形成に関わるタンパク質が運動や加齢によって変化することが報告されている。このことは、幅広く骨格筋リモデリングを反映する筋タンパク質合成の段階ではなく、その後の筋原線維形成を観察することが骨格筋量・機能調節の解明において重要なことを示唆するが、その観察手法は確立されていない。本研究では、新規に合成されたタンパク質の局在化観察手法を確立し、これまで測定することができなかった新規合成タンパク質の筋原線維形成動態の可視化を試みる。 これまでにPuromycinを用いたSUnSET法によって新規に合成されたタンパク質が主に筋原線維構造に沿って局在していることを観察していたが,本年度は実際に高強度筋収縮によって筋タンパク質合成が亢進した際にそれらが増加するか検討した.その結果,高強度筋収縮によって筋原線維構造に沿った局在の新規合成タンパク質が増加することを確認できた.ただし,新規合成タンパク質の増加は筋原線維構造に沿った場所だけでなく,筋線維上で一様に観察された.また,SUnSET法ではどのタンパク質の合成が増加したのかまでは特定できず,実際に筋原線維タンパク質の追加が生じているのかは不明であった.そこで,Proximity ligation assayを用いて新規合成ミオシンの可視化を試みた.その結果,筋線維上で複数の新規合成ミオシン(puromycinラベルされたミオシン)を観察することができた.ただし,新規合成ミオシンは必ずしも筋原線維構造にあるミオシン上に局在が観察されるわけではなく,遊離のミオシンとして存在している可能性が示唆された.
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