研究課題/領域番号 |
19K22809
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森山 英樹 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10438111)
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研究分担者 |
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
亀岡 正典 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (60281838)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 運動神経の良さ / 協調性 / 遺伝要因 / 環境要因 |
研究実績の概要 |
運動に必要な能力には、筋力や持久力などの身体能力と、体を思うように動かせる(協調運動)能力がある。前者が生まれ持った素質である遺伝要因の影響を大きく受ける一方で、一般に「運動神経の良さ」とよばれる後者は運動経験など環境により培われる能力とされてきた。先行研究と予備実験の結果を踏まえると、これまでの運動能力の概念とは異なり、「運動神経の良さ」に環境要因のみならず、遺伝要因も関与している可能性が出てきた。そこで本研究では、いわゆる「運動神経の良さ」の遺伝要因と環境要因の関与を明らかにすることを目的とする。遺伝要因の実験では、選抜交配実験を行った。協調運動能力の優れる、あるいは劣るマウスそれぞれを選抜し交配させ、第6世代まで交配を継続することで、協調運動能力に優れる・劣るマウス系統を樹立した。そして協調運動能力を司る遺伝子を同定するために、QTL解析とRNA-seq解析を行った。その結果、第2・5・13・14・15番染色体に存在する協調運動能力に関わる3つの遺伝子を同定した。今後はこれらの遺伝子の機能解明のための実験を行う予定である。一方、環境要因の実験では、マウスを通常のケージで飼育する通常飼育群と、通常のケージの4倍広いケージ内にホイールやトンネルなどの玩具を配置した環境で飼育するエンリッチ環境群に分けて飼育した。8週間の飼育期間終了後、協調運動能力を評価するためのロータロッド試験とバランスビーム試験を行ったところ、エンリッチ環境群では協調運動能力が向上していることが明らかとなった。また、エンリッチ環境で飼育したマウスの大脳および小脳の重量が増加し、そして小脳重量とバランスビーム試験の結果との間に相関関係が認められた。これらのことから、環境要因による協調運動能力の向上には小脳の神経解剖学的変化が関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、いわゆる「運動神経の良さ」を司る遺伝子の同定を終え、運動経験を積むことの協調運動能力への影響を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝要因では、リアルタイムPCR等を用いて同定した遺伝子の検証を行うとともに、その局在を同定する。さらに同定した遺伝子変異を再現した遺伝子組換えマウスを作製し、協調運動能力を協調性を測定するテストで精査する。その結果、遺伝子変異を再現したマウスがオリジナルのマウスと同じ性質を示すことをもって因果関係を実証する。一方、環境要因では、脳におけるエピジェネティクスの変化をChIP-seqで分析することで、環境要因が協調性能力に影響する分子メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初計画通りに行ったQTL解析とRNA-seq解析が、予定よりも安価で実施できたことが理由である。 (使用計画) 同定した遺伝子の検証実験の反復実験に充当する。これにより得られる結果の精度が高まることが期待できる。
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