本研究では,市販の安価なフォースセンサと他の材料を組み合わせて,歩行中の床反力と足圧中心軌跡,さらには,足部アーチの動的変化がスマートフォンなどの携帯端末においてリアルタイムで確認できる,低コストで使い捨てが可能な歩行計測用スマートインソールの開発を目的としている。開発した歩行計測用スマートインソールの有用性を,健常者だけでなく高齢者や障害者のような下肢疾患者で確認できれば,歩行分析の発展は勿論のこと,高齢者の転倒メカニズムの解明や高齢者のための生活空間や住宅の設計に貢献すると思われる。本年度の取り組みと得られた結果は次の通りである。
(1) 歩行計測用インソールの製作 ― 本研究に関連する既製品,研究報告,研究論文における問題点,被験者実験で得られた履物内での様々な問題点を踏まえ,前年度に考案した構造を改良して,低コストで使い捨てが可能な歩行計測用インソールを製作した。 (2) 曲率センサの評価 ― 考案した床反力の前後・左右成分が計測できるフィルム状フォースセンサの原理を応用して,足部アーチの変化を計測するための曲率センサを製作し,被験者実験により評価した。 (3) 歩行計測用インソールのスマート化 ― 歩行リハビリテーションなどの現場において日常的かつ手軽に利用できるように,得られた歩行に関するデータ列を無線通信によりパソコンで収集し,VisualBasic によるアプリケーションソフトの開発により可視化した。画面サイズの小さいスマートフォンでの表示にも対応できるようにした。 (4) 歩行計測用スマートインソールの有用性の検証 ― 開発した歩行計測用スマートインソールを用いて,異なる歩調,異なる床面環境,異なる履物で床反力と足圧中心軌跡を計測し,システムの実際応用上の有効性について検証した。得られた結果の一部は,医学系・健康科学系の雑誌論文(査読付)に掲載されることとなった。
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