研究実績の概要 |
本研究は、骨格筋細胞に備わった筋萎縮ストレス適応能力という観点から筋萎縮をとらえる研究である。本研究の目的は申請者が見出した骨格筋特異的な新規長鎖非コードRNAによる筋萎縮抵抗性プログラムの分子基盤を明らかにすることである。 2020年度は、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによる各標的mRNAのサイレンシングの分子メカニズムについて検討を行った。種々の非コードRNAが標的mRNAをサイレンシングする際に利用する分子群(SMG1, SMG5, SMG6, SMG7, Stau1, AGO1, AGO2, Dicer, UPF-1, UPF-2)の関与について検討を行ったが、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによる各標的mRNAのサイレンシングはこれら因子には依存していなかった。次に各分化段階の骨格筋細胞(筋芽細胞、筋細胞、筋管細胞)において、骨格筋特異的長鎖非コードRNAから新たに小分子非コードRNAが創出されるかについて解析を行った。その結果、骨格筋特異的長鎖非コードRNAのプロセッシングはどの分化段階の骨格筋細胞でも起っていなかった。 骨格筋特異的長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御機構について検討を行った。IRS1遺伝子のプロモーター領域には6つの代表的な転写因子結合サイトがあり、IRS1長鎖非コードRNA特異的なプロモーター領域には4つの代表的な転写因子結合領域が存在していた。これら転写因子について解析した結果、ホスト遺伝子の転写にはGRE,ERE領域とC/EBPが重要であり、長鎖非コードRNAの転写にはE-box領域が重要であることが解った。 以上の結果から、骨格筋特異的長鎖非コードRNAは小分子非コードRNAにプロセッシングされることなく機能すること、長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御は異なることが明らかとなった。
|