研究課題/領域番号 |
19K22817
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
福地 守 高崎健康福祉大学, 薬学部, 准教授 (40432108)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | BDNF / 脂肪組織 / 肥満モデルマウス |
研究実績の概要 |
発光により生体マウスにおけるBDNF遺伝子発現変化を可視化可能なBDNF-Lucマウスに通常食または高脂肪食を給餌し、1日1回マウス腹部の発光を測定することで、脂肪組織におけるBDNF発現変化を詳細に解析した。その結果、通常食では体重および腹部の発光の顕著な変化は認められなかったが、高脂肪食では数日後より体重のゆるやかな増加が認められるとともに、給餌1週間前後より腹部の発光が増加する傾向が認められ、10日以降では有意に上昇した。高脂肪食によるモデルマウスを用いた肥満の病態などの解析では、高脂肪食を少なくとも数週間以上給餌する例が多いが、高脂肪食によるBDNF遺伝子発現誘導は肥満の形成の1~2週間という比較的早期に起こることが示唆された。したがって、脂肪組織に発現するBDNFは、早期の肥満の病態形成に寄与する可能性が考えられた。 また、2週間高脂肪食を給餌したマウスの脂肪組織では、通常食と比較してBDNF遺伝子発現の増加のほか、BDNF受容体、VEGF、HIF1αなど、本研究の仮説を支持する因子群の発現誘導も認められた。さらに、脂肪組織におけるBDNF遺伝子発現パターンは、マクロファージ細胞株におけるパターンと酷似していたことから、脂肪組織に発現するBDNF遺伝子は、マクロファージに由来する可能性が示された。しかし、2週間高脂肪食を給餌したマウスの脂肪組織では、M1型、M2型マクロファージのマーカーの特徴的な変化は認められず、脂肪組織のマクロファージがどちらの型であるかは判別できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の採択・研究費交付以降、BDNF-Lucマウスを用いた脂肪組織におけるBDNF遺伝子発現の経時的変化、本研究課題の仮説を支持する各種因子の発現変化、など、本研究課題の仮説を立証するための基本となる結果が順調に得られているため、進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高脂肪食により発現が増加したBDNFは脂肪組織のどの細胞に由来するか検討する必要がある。この結果に基づき、BDNFは脂肪組織中のどの細胞で増加し、また発現が増加したBDNFはどの細胞の受容体に作用し肥満の病態形成に関わるのか、本研究課題の仮説を立証するための直接的な解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
継続課題である基盤研究(B)において、BDNF-Lucマウスを用いた生体イメージングにかかる実験消耗品を購入していた。本年度に生体イメージングを実施する際、すでに購入していた消耗品を使用したため、次年度使用額が生じた。 基盤研究(B)は2019年度で終了しており、また上記購入済みの実験消耗品は残量がないため、次年度使用額はこれら消耗品購入に使用する。
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