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2019 年度 実施状況報告書

NAD+およびエピゲノムの制御による老化メカニズムの解明と新たな抗加齢介入の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K22818
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

齋藤 義正  慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (90360114)

研究分担者 金井 弥栄  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00260315)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2021-03-31
キーワード老化 / NAD+ / エピゲノム / オルガノイド培養 / 抗加齢
研究実績の概要

老化した幹細胞はその自己複製能や多分化能が低下しており、それに伴い組織、臓器の構築・維持ができなくなり、生命そのものの老化に繋がると考えられている。これまでの研究で、加齢に伴い細胞内のNAD+(Nicotinamide adenine dinucleotide)が減少していることや、NAD+前駆体をマウスに経口投与すると、骨格筋や肝臓でのミトコンドリア機能の改善や長寿遺伝子であるSirt1の活性化を介して、寿命が延伸することが報告されている。我々は120週齢の老齢マウスから腸管上皮幹細胞を分離することで三次元組織構造体であるオルガノイドを樹立し、NAD+前駆体であるNMN (Nicotinamide mononucleotide)、NR (Nicotinamide riboside)、NAM (Nicotinamide) を投与することで、腸管上皮オルガノイドに対する抗加齢効果やSirt1に対する影響を検討した。
老齢由来腸管上皮オルガノイドにNMNを投与すると、腸管上皮幹細胞の組織構築能力が増加し、幹細胞マーカーであるLgr5の発現上昇、老化関連遺伝子の発現低下が確認された。また、NAD+前駆体であるNRを投与したところ、同様に組織構築能力が増加した。一方、NAM、Sirt1阻害剤であるEX527を投与すると、オルガノイドの形態が扁平嚢胞状に変化し、細胞増殖力も増加していることが確認された。
NRおよびNMNは老齢由来腸管上皮オルガノイドの組織構築能力を向上させ、腸管上皮幹細胞および腸管組織を若返らせる可能性が示唆された。また、NAMはSirt1阻害作用を介して老齢由来腸管上皮オルガノイドの組織形態や細胞増殖能を変化させる可能性が示唆された。今後は、老化の過程でのエピゲノム変化やNAD+前駆体を投与した際のエピゲノム変化の解析を行い、老化の分子メカニズムの解明を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り、120週齢の老齢マウスから腸管上皮幹細胞を分離することで三次元組織構造体であるオルガノイドを樹立し、NAD+前駆体であるNMN (Nicotinamide mononucleotide) 、NR (Nicotinamide riboside)、NAM (Nicotinamide) を投与することで、腸管上皮オルガノイドに対する抗加齢効果やSirt1に対する影響を検討した。
NRおよびNMNは老齢由来腸管上皮オルガノイドの組織構築能力を向上させ、腸管上皮幹細胞および腸管組織を若返らせる可能性が示唆された。また、NAMはSirt1阻害作用を介して老齢由来腸管上皮オルガノイドの組織形態や細胞増殖能を変化させる可能性が示唆された。以上より、本研究はおおむね計画通りに進んでいると考えられる。

今後の研究の推進方策

上述の通り、老齢由来腸管上皮オルガノイドに対して、NAD+前駆体を投与することで、若返り効果を確認することができたが、その機序は明らかになっていない。今後は、幹細胞における加齢に伴うエピゲノム変化や、NAD+前駆体を投与した際のエピゲノム変化の解析を行い、老化の分子メカニズムの解明を目指す。さらに、特定された加齢に伴うエピゲノム変化を人為的に制御することによる新たな抗加齢介入の開発にも挑戦したい。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、腸管上皮オルガノイドの樹立とNAD+前駆体の投与による変化の解析が主体であったが、予定よりも消耗品を抑えて実験を遂行することができた。
当初予定されていたオルガノイドの樹立に必要な消耗品の費用を次年度に予定されているエピゲノム解析関連の費用として使用することとした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Establishment of Patient-Derived Organoids and Drug Screening for Biliary Tract Carcinoma.2019

    • 著者名/発表者名
      Saito Y, Muramatsu T, Kanai Y, Ojima H, Sukeda A, Hiraoka N, Arai E, Sugiyama Y, Matsuzaki J, Uchida R, Yoshikawa N, Furukawa R, Saito H.
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 27 ページ: 1265-1276

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2019.03.088.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genomic Profiling of Biliary Tract Cancer Cell Lines Reveals Molecular Subtypes and Actionable Drug Targets.2019

    • 著者名/発表者名
      Lau DK, Mouradov D, Wasenang W, Luk IY, Scott CM, Williams DS, Yeung YH, Limpaiboon T, Iatropoulos GF, Jenkins LJ, Reehorst CM, Chionh F, Nikfarjam M, Croagh D, Dhillon AS, Weickhardt AJ, Muramatsu T, Saito Y, Tebbutt NC, Sieber OM, Mariadason JM.
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 21 ページ: 624-637

    • DOI

      10.1016/j.isci.2019.10.044.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Generation of human hepatic progenitor cells with regenerative and metabolic capacities from primary hepatocytes.2019

    • 著者名/発表者名
      Katsuda T, Matsuzaki J, Yamaguchi T, Yamada Y, Prieto-Vila M, Hosaka K, Takeuchi A, Saito Y, Ochiya T.
    • 雑誌名

      Elife

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.7554/eLife.47313.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Organoid培養法により樹立した腸管上皮幹細胞に対するNMN (Nicotinamide mononucleotide) による抗老化効果の検討2019

    • 著者名/発表者名
      野上和幹、内田諒英、梶山洋平、鈴木裕佳水、齋藤義正、木村真規、齋藤英胤
    • 学会等名
      第19回日本抗加齢医学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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