研究実績の概要 |
加齢に伴い骨格筋の筋肉量および筋力は低下する。しかし、この加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)の発症機序の詳細については十分に解明されていない。レジスタンストレーニングはサルコペニアに予防・改善に有効であることが確認されている。漢方薬は、加齢に伴う体の不快や不調、病後・術後の体力低下や虚弱体質の改善などの目的に使われることが多く、サルコペニア該当者やその予備軍が何かしらの漢方薬を日常的・長期的に服用していることが予想される。我々はこれまでに、一過性レジスタンス運動による筋タンパク質合成を相乗して高める漢方薬として枇杷葉(ビワヨウ)を同定した(Hung YL, et al. Evid Based Complement Alternat Med, 2022)。本研究では、閉経後のラットを用いて、レジスタンストレーニングによる筋肥大へ及ぼす枇杷葉の影響について検討した。具体的には、自然閉経後の16ヶ月齢F344雌性ラットを安静(CS)群、クライミング運動トレーニング(CT)群、枇杷葉投与(LS)群、枇杷葉投与+クライミング運動トレーニング (LT)群の4群に振り分けた。枇杷葉投与は、ゾンデを用いて枇杷葉煎液を1日に1回の頻度で8週間、経口投与した。また、運動トレーニングは 3日に1回の頻度で8週間(計20回)実施した。8週間の枇杷葉投与によって、LT群はCT群よりトレーニング時の最大負荷値に高い傾向を示した。さらに、LS群の長母趾屈筋の湿重量は、CS群より有意に高値を示した。しかし、CT群とLT群との間に筋湿重量の有意差は認められなかった。筋線維タイプ毎の筋横断面積においても筋湿重量と同様な結果が認められた。これらの結果から、枇杷葉が閉経後の女性の骨格筋量と筋力を増加することが示唆されたが、レジスタンストレーニングとの組み合わせによる相乗効果は認められなかった。
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