研究課題/領域番号 |
19K22822
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
彼末 一之 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (50127213)
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研究分担者 |
礒 繁雄 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (10193385)
吉永 武史 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10386659)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ランニング / 幼児 / 子ども |
研究実績の概要 |
本研究は、アスリートの競技力向上に資する4つのテーマのうち、①よい動作の体感・実践に関係するプロジェクトである。ヒトは2歳~3歳には走れるようになるが、能力には大きな個人差がある。そのため走能力は生まれつきの素質によると広く考えられているが、疾走能力はランニングフォーム(技術)と強く関係することが初年度からの2年間による研究で明らかになってきた。最近陸上短距離選手が特徴的な「走速度-ケイデンス(単位時間当たりの歩数)-ステップ長(一歩の大きさ)の関係(V-C-S特性)」を持つことが報告されている。このV-C-S特性は高いスピードを発揮するための「正しいランニングフォーム」を獲得した結果であると考えられる。この特性の獲得過程を明らかにする事はランニング指導(特に走りが苦手な子ども)に役立つと考えられる。本年度の実績概要は以下の通りである。 これまで1~10才児の幼児・児童の測定を行ってきた。本年度までの研究によって10才児頃までに成人のV-C-S特性に近づいていく可能性が示唆されたが、具体的な時期を明らかにする事ができなかった。そこで、本年度はこれまで測定した被験者の縦断的な測定および10歳以上の児童の測定を行う事で、V-C-S特性の形成について明らかにする事を目的とした。縦断研究では、初回測定で幼児~低学年だった被験者について行ったが、各年代におけるデータはこれまでの横断的測定で得られたデータ(10歳程度まではケイデンスの増加が主)と同様な傾向が得られた(図1)。しかし、これの結果は成人のようなV-C-S特性が形成される時期・要因を特定するためには及ばないため、今後も縦断的な測定を行う予定である。合わせて、これらの変化に個人の運動習慣がどのように影響していくかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で発育発達に伴う走運動の特性(V-C-S特性)は発達段階に応じて特徴的な傾向を示す一方で、ある時期を境に成人の走運動特性に近づいていく事が明らかになった。幼児・児童期(あるいはそれ以降)の運動経験(陸上競技以外も含む)が走運動特性の形成に及ぼす影響は今後の研究課題だが、この走運動特性は個人の走運動能力を評価する上で有用かもしれない。特に、この特性に応じたランニング指導は走るのが苦手な児童の動作改善に有効であると考えられる。今後は走運動能力とV-C-S特性の関係を測定し、より効果的な運動プログラムを考案する必要がある。ただし、発育・発達過程にある子どもでは成人で有効と考えられるトレーニングなどがそのままは応用できないので、怪我のリスクなども考慮して具体的にどのような運動プログラムが必要かを次年度は検討する。 2020年度は新型コロナウイルス渦の影響が考えられるので、研究を予定通り進める努力をする一方で、実験が出来ない場合を想定して、これまで取得したデータをより詳細に解析することも合わせて行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後のV-C-S特性の競技経験、年齢などを包含するような原理を得るために、今後陸上競技選手の走行中の筋活動を測定する。それらのデータから、V-C-S特性におけるケイデンスとステップ長の相対的な寄与の変化と筋活動のパターンの変化が一致するか否かを検討する。これらのデータは今後のランニングフォームとV-C-S特性の関係解析に応用していく予定であり、ランニングの指導を行う上でも有益な知見になるだろう。 長距離選手(特に専門家がフォームが悪いと判断する群)に「正しいフォーム」を指導し、その前後における疾走速度(短距離走能力)とエネルギー効率(長距離走能力)、V-C-S特性を測定する。この実験は検者と被験者の予定が合わず本年度実施が困難だった。しかし、今後のランニングフォームの指導において重要な要素になるかと思われるので2020年度後の研究で実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルスの影響で予定通り実験が出来なかったために、それを次年度に行い、さらに次年度に行うことを当初から予定していた実験も行うこととした、そのために特に研究助手を雇用して研究を迅速に進める予定である。
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