研究課題
超高齢社会にある我が国において、身体諸機能の退行性変化を抑制して、健康寿命を延伸することが求められている。健康寿命の延伸には、運動器である骨格筋量と機能の維持が必須である。一般に、筋力は筋量に比例することから、骨格筋量を維持・増量が重要となる。最近、臓器・組織間の連関・相互作用「臓器間ネットワーク」による生体諸機能の調節機構の存在が明らかになった。骨格筋細胞では、骨格筋とは無関係であると考えられてきた食事により分泌が誘発される消化管ホルモンの受容体の発現が確認された。しかし、骨格筋細胞における消化管ホルモンその生理学的意義は不明である。そこで本研究では、骨格筋量を調節する臓器間ネットワークにおける消化管ホルモン「胃抑制性ポリペプチド(GIP)」の役割を解明し、経口の食事の新たな生理学的意義を提示することを目的として、2年計画で実施する。2019年度は研究1年目であり、神経系や内分泌系の影響がない培養細胞実験ならびに動物実験により、骨格筋量調節におけるGIPの役割を追究すべく実験を実施した。培養細胞実験では、C2C12細胞を用いて、培養筋細胞にGIPを投与し、細胞の増殖および筋管形成、筋管細胞の肥大(成長)に及ぼすGIPの影響を追究した。GIPはdipeptidyl peptidase-4(DPP-4)により速やかに分解され、不活性化することが知られている。そこで、難分解性のD-Ala2 GIP(Mouse,1-42)を合成して、まずはC2C12細胞に対する効果を検討した。その結果、D-Ala2 GIP(Mouse,1-42)でも筋管形成および筋管細胞の肥大が引き起こされたことから、GIP投与と同様の効果が得られた。現在、マウス(C57BL/6J、雄性)を用いて、廃用性萎縮、筋肥大モデルを作成し、GIP投与による筋萎縮の軽減あるいは筋肥大の増強の有無を検討を開始している。
2: おおむね順調に進展している
本研究は2年計画で実施され、まず1年目は培養骨格筋細胞ならびに実験動物(マウス)を用いて、骨格筋細胞に対するGIP投与の影響を評価する予定であったが、ほぼ計画通りに実施できている。
研究2年目は、投与されたGIPが骨格筋細胞に作用をもたらす分子機序を追究する予定である。培養骨格筋細胞を用いた実験では、GIP受容体をノックダウンしてGIP受容体機能不全細胞も用いた検討を行う。また、生後100週齢の加齢マウスを用いて、骨格筋可塑性に対するD-Ala2 GIP(Mouse,1-42)投与の影響を評価する予定である。一連の研究により、消化管ホルモンであるGIPによる胃・小腸-骨格筋間に存在する臓器間ネットワークによる骨格筋機能調節機構を明らかにする。
研究計画の内、本年度はサンプル作成に注力し、分析の一部を次年度に繰り越したことから、試薬など消耗品に係る経費を次年度に繰越すこととなった。したがって、持ち越されら分析にこの繰越金は充当される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件)
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