研究課題/領域番号 |
19K22826
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小林 聡 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)
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研究分担者 |
和久 剛 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (40613584)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | タンパク質恒常性 / プロテアソーム / 遺伝子発現 / 連動的制御機構 / アンチエイジング |
研究実績の概要 |
老化の原因として、タンパク質分解酵素プロテアソームの機能低下があげられる。これにより変性タンパク質が細胞に蓄積し老化が進行する。したがってプロテアソーム発現を誘導できれば老化予防できる(アンチエイジング)。ところがプロテアソーム遺伝子の発現機構については不明な点が多い。そこで本研究の目的は、プロテアソームの誘導機構の全容を解明することで、これをターゲットにした新たなアンチエイジング法の開発のための基盤的知見を提供する店にある。そこで本年度は、プロテアソーム誘導機構の解析を詳細に行い、いくつかの予備的な知見を得ている。さらにこの解析過程で、新たに「タンパク質恒常性におけるプロテアソームとオートファジーの連動的活性化機構」を発見した。具体的には、プロテアソーム活性の低下時に、転写因子NRF1がプロテアソーム遺伝子群を包括的に発現誘導しつつ、同時に選択的オートファージーに関わるリン酸化酵素TBK1とオートファゴソーム構成因子GABARAPL1を直接発現誘導していることを発見した。これまでプロテアソーム阻害によるオートファジーの活性化は細胞内のアミノ酸レベルの低下が関わるのではないかと考えられてきたが、NRF1が積極的にオートファジーを活性化するメカニズムの存在を明らかにすることができた。以上の結果は、NRF1をターゲットにした治療法の開発は、プロテアソームのみならずオートファジーも活性化するため、細胞内のタンパク質恒常性の維持、そしてアンチエイジングにつながる可能性が高いことを強く意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、転写因子NRF1によるプロテアソーム遺伝子群の発現機構を解析している中で、もう1つのタンパク質分解系であるオートファジーとの連携を発見した。具体的には、選択的オートファジーを制御するリン酸化酵素TBK1とオートファゴソーム構成因子LC3の関連因子GABARAPL1の発現をNRF1が制御していた。ヒト大腸癌由来HCT116細胞にプロテアソーム阻害剤MG132を添加すると、プロテアソーム遺伝子群の誘導とともにTBK1とGABARAPL1を誘導した。NRF1により誘導されたTBK1はもう1つの選択的オートファジーに関わるp62をリン酸化し、ユビキチン化タンパク質をオートファゴソームに輸送することがすでに他の研究者により証明されている。一方のGABARAPL1もオートファゴソームの構成要素としてタンパク質分解をもたらすことが知られている。NRF1によるTBK1ないしGABARAPL1の制御は直接的であることは、両遺伝子の制御領域に種間で高く保存されたNRF1結合配列(ARE配列)が存在し、この配列にNRF1が直接結合することをクロマチン免疫沈降で証明した。以上の結果は、アンチエイジングに関わるタンパク質恒常性機構において、プロテアソーム誘導とともにオートファージも連動し活性化することを強く示唆する。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に述べたように、プロテアソーム遺伝子群の連動的発現機構に対する3C法(Chromosome conformation capture)取り組む。また昨年度発見した「タンパク質恒常性におけるプロテアソームとオートファジーの連動機構」について、さらに分子機構を詳細に明らかにする。この連動性の破綻がタンパク質恒常性の破綻につながり、細胞死ないし細胞のエイジングを引き起こすことを証明する。
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