研究課題
老化の原因として、タンパク質分解酵素プロテアソームの機能低下があげられる。これにより変性タンパク質が細胞内に蓄積し老化が進行する。したがってプロテアソーム発現を誘導できれば老化予防できる(アンチエイジング)。ところがプロテアソーム遺伝子の発現機構については不明な点が多い。本研究では、上記の研究課題に対して、転写因子NRF1とその関連因子NRF3による制御機構に着目し研究を展開する。本年度は、プロテアソーム発現制御における新たな分子メカニズムとして、転写因子NRF1とNRF3による連動的発現機構を発見した。NRF1は多くの細胞・組織においてユビキタスに発現する転写因子である。一方、関連因子であるNRF3は角膜上皮細胞や皮膚等の一部の細胞・組織以外は発現レベルが低いが、大腸がんや膵がんなどの腫瘍細胞では著しく発現亢進する。そこでNRF3のがん細胞における機能を解析したところ、NRF1と同様にプロテアソームの発現に関わることを見出している。本年度は、NRF1ないしNRF3によるプロテアソーム発現機構の差異について解析したところ、興味深いことにNRF3はNRF1のタンパク質発現を抑制することを見出した。詳細に解析した結果、NRF3はがん細胞において翻訳制御因子CPEB3の遺伝子発現を直接活性化すること、誘導されたCPEB3はNRF1 mRNAの3’ 非翻訳領域(UTR)に存在するCPE配列に結合し、mRNAからのNRF1タンパク質の翻訳を抑制することを発見した。この結果は、プロテアソームの発現は、正常細胞ではNRF1が担当し、がん化するとNRF3による発現制御ネットワークへと連動しつつリプログラムされていることを意味する。さらにNRF1とNRF3によるタンパク質恒常性に関わるプロテアソーム遺伝子発現ネットワークに機能的な差異があるという新たな課題を生み出した。
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