研究課題/領域番号 |
19K22838
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
國廣 昇 筑波大学, システム情報系, 教授 (60345436)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 暗号化データベース / 安全性評価 / 順序保存暗号 |
研究実績の概要 |
大量のデータがあふれる現在において,大規模なデータベースにデータを格納することが標準になりつつある.サーバの不正を防ぐためには,データは暗号化した上で保管されなくてはならない.本研究の目的は,暗号化データベースに対する安全性評価に関する研究を行うことである.2022年度は,情報の安全性を保証する技術に関して3つの成果を得た. 1つめの成果は,差分プライバシーを提供するノイズ生成プロトコルに関するものである.離散ラプラス分布と二項分布からノイズを生成する3種類のプロトコルを提案し,提案プロトコルは能動的な攻撃者に対しても差分プライバシーを保証することを示した. 2つめの成果は,d-Multiplicative秘密分散に関するものである.ここで,d-Multiplicative秘密共有とは,n人の参加者がd個の秘密の積を共有することを可能にする秘密分散法である.multipartite攻撃者構造に着目し,効率的でなおかつ検証可能なd-Multiplicative秘密分散法を提案した.さらに,小さい誤りを許容し,なおかつ攻撃者構造を制限することにより,より効率的な方式の提案を行った. 3つめの成果は,ランプ型秘密分散に関するものである.ランプ型秘密分散とは,秘密に関する一部の情報の漏洩を許すことにより、完全な秘密分散よりも優れた情報比を達成する秘密分散法である.線形代数の問題に帰着させることにより,一般的なアクセス構造に対する強安全なランプ秘密共有法を構成する2つの線形変換方法を提案した. 以上の3つの成果をもとに,査読付き論文誌に3件発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,情報の安全性を保証する技術(差分プライバシー,秘密分散)に関して3つの成果を得た. 1つめの成果は,差分プライバシーを提供するノイズ生成プロトコルに関するものである.差分プライバシーとは,個人の情報を保護しながら統計的な分析を行うために必須な技術である.離散ラプラス分布と二項分布からノイズを生成する3種類のプロトコルを提案し,提案プロトコルは能動的な攻撃者に対しても差分プライバシーを保証することを示した.さらに,それぞれのプロトコルのラウンド数および通信複雑さについて評価を行った. 2つめの成果は,d-Multiplicative秘密分散に関するものである.ここで,d-Multiplicative秘密共有とは,n人の参加者がd個の秘密の積を共有することを可能にする秘密分散法である.multipartite攻撃者構造に着目し,効率的でなおかつ検証可能なd-Multiplicative秘密分散法を提案した.3種類の攻撃者構造に適した方式を提案し,それぞれのシェアサイズや証明サイズについて評価を行った.特に,3つめの方式では,小さい誤りを許容し,なおかつ攻撃者構造を制限することにより,より効率的な方式の提案を行った. 3つめの成果は,ランプ型秘密分散に関するものである.ランプ型秘密分散とは,秘密に関する一部の情報の漏洩を許すことにより、完全な秘密分散よりも優れた情報比を達成することができる秘密分散法である.一般的なアクセス構造に対する強安全なランプ秘密共有の構成を線形代数の問題に帰着させることにより,2つの線形変換方法を提案した.さらに,現実社会への応用として,強安全なランプ型方式をマルチユーザー設定における対称情報秘匿検索に適用した新しいアプリケーションを提案した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2021年度から継続的に進めてきた,暗号データベースに関する安全性評価に関する研究の精緻化を進める.査読付き国際会議への投稿を行うほか,さらなる効率化および性能向上を目指す.これまでに提案した1つめの攻撃は,ノイズが大きい場合には解を復元することができず,理論的にどの程度のノイズが乗っても解の復元が可能であるかの理論限界も不明である.理論評価およびアルゴリズムの改良を行う.2つめの攻撃は,依然,ヒューリスティックなアルゴリズムであり,事前情報を最大限に利用できていない.そのため,さらなる改良を行う. さらに,大規模な実データを利用することにより,実際の計算機上で,安全性評価を行い,現実に与えるインパクトに関して詳細に検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2022年度は,これまで進めてきた研究の論文化及び,周辺技術,手法の提案を主に行ったため,大規模数値実験に着手をしていない.そのため,数値実験計算機の分が,未使用となり,次年度使用額が生じた. (使用計画)2023年度は、大規模数値実験をおこなう準備ができ次第,高性能の計算機を購入する予定である.
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