研究課題/領域番号 |
19K22843
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷川 亨 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (70576264)
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研究分担者 |
小泉 佑揮 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (50552072)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 情報指向ネットワーキング / プライバシー / インターネット |
研究実績の概要 |
Information Centric Networking(ICN)は,コンテンツの指定にUniversal Resource Locator (URL)のような名前を用いるため,ネットワーク内の盗聴者などの攻撃者に,要求者が要求したコンテンツの情報が漏洩する.すなわち,要求者のプライバシーが漏洩する.これに対して,コンテンツの名前を暗号化することがプライバシー漏洩を防ぐ一つの手法である.初年度は,名前の暗号化の強靭性,すなわちどの程度のプライバシーが漏洩するかを評価した. 第一に,コンテンツ名から漏洩するプライバシーを評価するため,攻撃法を考案した.攻撃者がコンテンツの人気度の分布を補助情報として知っている場合、攻撃者が多数のコンテンツを盗聴すると、暗号化されたコンテンツ名から元の平文のコンテンツ名を推測される脆弱性がある.これに対して,攻撃者が平文のコンテンツ名とコンテンツの人気度を知っており、盗聴した暗号化コンテンツの頻度を比較することにより、暗号化名に対応する平文のコンテンツ名を推測する頻度攻撃を定義した. 第二に,ICNでは一つのコンテンツが複数のパケットで送信されるため,一つのコンテンツ名に対して,複数の暗号化されたパケット名が生成される.コンテンツが複数のパケットで送信される場合に対処するため,頻度攻撃を改良した. 第三に,頻度攻撃に対する脆弱性をシミュレーションを用いて評価し,以下の点を明らかにした。第一に、攻撃者は,暗号化されたパケットの生起確率を用いることで、高い確率で暗号化されたパケット名に対応するデータ名を推定可能である。第二に、コンテンツの人気順位を活用した頻度攻撃が高い確率で、データ名を推定可能である。第三に、盗聴時間が長くなり、盗聴するパケットが増加するにつれて,コンテンツ名の推定が成功する確率が高くなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の目標は,項目1のモデル化を達成することであり,暗号化パケット名に対する攻撃を定義し,攻撃に対する脆弱性を評価することで,この目標を,以下の通り達成した. (1)暗号化パケット名から漏洩するプライバシーとして,頻度攻撃により元のコンテンツ名が攻撃者に推定される確率を定義した. (2)情報指向ネットワーキングに固有の1つのコンテンツが複数パケットから構成される条件に対応して,頻度攻撃を改良した. (3)頻度攻撃に対する暗号化パケット名の脆弱性をシミュレーションを用いて評価した.この結果,平文のコンテンツ名に対して,同じ暗号化パケット名を使用し続ける時間が長くになるにつれ,推定される確率が高くなることを明らかにした.2年目以降は,この結果を用いて,漏洩を防御する手法を設計する.
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今後の研究の推進方策 |
令和元度の研究成果に基づいて,2年目の目標である項目2「漏洩量の比較」を実現するために,以下の研究を実施する. (1)匿名ルーティングとの比較 情報指向ネットワーキングにおけるプライバシーとして,コンシューマが要求するコンテンツ名が漏洩しないことを保証するコンシューマ匿名性,要求者が提供するコンテンツ名が漏洩しないプロデューサ匿名性が定義されることがあり,これらの匿名性をアプリケーション層で実現する匿名ルーティング(オニオンルーティングとも呼ばれる)が使用されている.これに対して,インターネットのネットワーク層で提供することが望ましいプライバシーを明らかにするため,1年目に定義したプライバシーとこれらの匿名性について,通信量,計算量などを定量的に比較する. (2)1年目の結果に基づいて,①コンテンツ名に対応する暗号化パケット名を時間経過につれて変更させる手法,②コンテンツ名を複数の暗号化パケット名に対応させる手法を,プライバシー保護手法として取り上げ,頻度攻撃による推定率を評価する.さらに,これらの手法は,人気度の高いコンテンツのキャッシュヒット率を減少させることが考えられるため,推定率の減少とキャッシュヒット率の減少の,正負のトレードオフを評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で学会発表できなくなったため、旅費を使用しなかった。次年度に論文誌の投稿に切り替え、掲載料として支出する。
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