研究課題/領域番号 |
19K22846
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
栗林 稔 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50346235)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 畳み込みニューラルネットワーク / 敵対的事例 / ノイズ除去フィルタ / 真偽判定 |
研究実績の概要 |
古くから合成画像の解析には,高度な知識と経験を有する専門家が,画像中の不自然さの有無を調べる手段が採られてきた.電子化された画像においては,画像処理ツールの発達とともに合成画像の作成と判定技術の両方が発展している.本研究では,人間の視覚に頼るのではなく,マルチメディアコンテンツに対する信号処理技術を駆使し,取り出す特徴成分信号に対して,機械学習の技術を併用して真偽判定を行う.圧縮やフィルタ操作による影響も含めて,カメラから直接録画された信号であるか否かについて判定する. 畳込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた画像の認識器においては,意図的なノイズを付加することで,誤った判定を引き起こさせる敵対的事例の存在が問題となっている.通常の画像と比較しても,その違いを視覚的に検出することは極めて難しく,敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いて作成された敵対的事例は加えられたノイズのエネルギー量も小く抑えられている. 本研究では,ノイズ除去フィルタの強度を徐々に高くすることで,ノイズの影響が変化して画像認識器の出力に特徴が生じる点に着目し,真偽判定を行う手法を考案した.ノイズ除去フィルタは特注として作成するのではなく,汎用的なフィルタを用いて初期実権を行った結果,非可逆圧縮であるJPEG圧縮において品質パラメータを変化させる方法が効果的に特徴を抽出できることが判明した.そこで,品質パラメータの変化に伴って,画像認識器の出力ラベルの変化を観測し,圧縮前の画像の出力ラベルと異なるラベルを出力した回数を特徴成分として真偽判定を行った.その結果,極めて高い精度で判定できる手法を考案することができた.更には判定に必要な計算量を削減する方法に関して取り組み,その知見を深めるところまで到達することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェイクコンテンツとして,ノイズを加えることで画像識別器が誤判定するように生成された敵対的事例を対象に,その真偽判定を行うための手法を考案することができた. 計算機リソースとして,本研究課題の予算においてGPGPUマシンを購入し,シミュレーション環境を構築した.また,よく知られている画像データベースから選出した画像に対して,代表的な敵対的事例作成手法を適用させて,大規模なシミュレーションを行って数値データの収集を行った.得られた統計的なデータを元に,ノイズ除去フィルタの強度を変化させた際に生じる画像認識器の出力結果の変化を特徴成分とするアイディアを適用させて,高精度で敵対的事例を判定できる手法を実現させることができた. その手法の計算量削減にとも取り掛かり,数回画像認識器を適用させれば真偽判定できるところまで可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
敵対的事例の審議判定のテーマについては,新しい敵対的事例の生成手法が複数発表されているため,それらに対してユニバーサルに適用可能な手法の実現を目指して,研究を進めていく予定である.また,汎用的なノイズ除去フィルタを使っているが,統計的なデータに基づいて,効果的なノイズ除去フィルタの設計についても取りかかりたい. フェイクコンテンツとして,特定の人物が実際に発話しているように見える動画について,人工的に作成されたものか,通常の撮影されたものであるかを識別できる手法の考案も手掛けていく予定である.敵対的事例とは異なり,動画中の複数のフレームにおいて,処理された形跡を調べて,不自然な信号の有無を検出することで,真偽判定できる手法を提案する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に開催される研究会への出張費を計上していたが,コロナウィルス拡散防止のため研究会の開催が中止となったため
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