本研究ではIoT(Internet of Things)機器を一定期間利用した後,強制的にインターネットから遮断するなど一部の機能の利用を制限するハードウェア技術の開発を目指して実施した.センサなど広範囲に大量に設置するようなIoT機器の場合利用者が長期にわたり確実に管理することが難しい.正しく管理されないIoT機器が長期間インターネットに接続された状態になるおそれがある.攻撃者はこれらIoT機器の脆弱性を利用して悪用することが考えられる.IoT機器の場合,その利用者は乗っ取りに直ちに気付くことができず,長期にわたり悪用される可能性もある.管理が保証されない以上,IoT機器の動作期間は設計者または利用者によって利用開始前に定義できるような仕組みが必要である. このような要件を満たす技術として,IoT機器のライフサイクルマネジメント技術を開発した.通信の際にOTPを利用することとし,OTPの鍵情報を格納するメモリへのアクセスは物理的制約により限られた回数のみ可能となる仕組みを導入した.具体的には,NEMSスイッチを用いる.メモリへのアクセス経路にはNEMSスイッチが設置され,複数回のアクセスが生じるとNEMSスイッチが物理的に破壊されメモリへのアクセスが不可能になる.ライフサイクルマネジメント技術を取り入れたIoTシステムを構築し,シミュレーションにより必要な回数のみ通信が可能であること,追加ハードウェアの面積や消費電力に関する評価を実施し,有効性を確認した.
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