研究課題/領域番号 |
19K22851
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
矢野 昌平 長岡工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 准教授 (90332006)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | バイオメトリクス / 耳音響認証 / 波面合成 / アレースピーカ / アレーマイクロホン |
研究実績の概要 |
申請者らはイヤホンから音を送出し、耳からの反響音で常時認証を行う耳音響認証を考案した。耳音響認証ではイヤホンを装着する必要がある。イヤホンと耳とが接触しないノンコンタクトで行うことができれば、スマートホンを耳にかざすだけで個人を認証することが可能となる。これは画期的で高い汎用性をもち、社会的イノベーションを引き起こすと考えられる。バイオメトリクス認証において最も大きな問題は、登録時と認証時との測定環境変化によって引き起こされるバイオメトリクスデータの変化である。この変化は「観測揺らぎ」と呼ばれ、認証精度の劣化や誤認証の原因となる。ノンコンタクト耳音響認証においては、認証のための装置が耳に固定されないため、耳と認証デバイスとの位置変動が観測揺らぎとなる。しかし、スピーカから送出された音波は、様々な方向から耳介や外耳道に放射されることで、複雑に反射・回折・干渉する。そのため、位置変動と音響特性との関係は、複雑な関数となり数式化することは困難であるという問題点がある。そこで、送出方法および収音方法からこの問題点にアプローチする。 2019年度は、送出方法に焦点を当て、バランス型アマチュア(BRA)小型スピーカをアレイ上に配置し超小型波面合成(Wave Field Synthesis:WFS)を耳近傍において行うこと実施した。直線的に8個のBRAを並べた送出装置を作成し、WFSの実現を実験的に検証を行った。実験結果は2019年度電子情報通信学会信越支部大会にて「WFSを用いたノンコンタクト耳認証の実現」として研究報告を行った。2020年度については、2次元方向に拡大し実験を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までの進捗状況としては、遅れているとの判断を行った。理由として、新型コロナウイルスの影響にて3月から現在までの期間において、研究室での実験等については活動を大きく低下している。これは、学生の安全を確保つつ研究を実施する上で最も優先される事項である。遠隔での研究活動は継続し実行されているため、評価としては遅れているとした。7月以降は、コロナ禍での安全を考慮しつつ研究・実験活動を通常と等しくなるように戻していく予定である。 学術研究においては、当初予測していないことが起こることがあるため、初年度の研究遂行は、計画よりも遅れがちになることが想定される。このことを考慮しても、本研究課題の進捗状況については遅れているとの判断を行った理由として、実際に電子部品の選定から始まりWFSを再現するためのBRAを選定するのに多くの時間を有したことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策について、2019年度において、WFSを再現するためのBRAを選定するのに多くの時間を有したが、おおむねそれらの電子部品の選定については終了している。2020年度以降については、選定したBRAをもちいてWFS装置を作成し、送出実験を実施する。2019年度では位1次元方向のみであったが、2020年度は2次元方向に拡張する。また、2021年度には収音についての検討を実施する予定である。 2020年に発生し継続しているコロナ禍の影響に対して、我々はテレワークが取り上げられる前より、研究環境についてテレワーク可能環境の構築を行ってきた。具体的には遠隔においても研究開発環境を有したPCへのアクセスが可能となっている。しかしながら実際の運用においては、多くの問題が発生した。主に、研究実施者となる研究室学生の自宅での環境によるものである。研究の実施にあたり、遠隔での研究可能なテレワーク用PC、およびテレワークのための電子機器を購入し、環境の整備をおこなった。今後も引き続き、研究推進のための開発環境の整備を行うとともに、研究遂行を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
19920円での次年度使用額が発生した。これは、3月以降コロナ禍の影響により、当初計画していた物品の購入や旅費が執行がむつかしくなったためです。
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