今日のスーパーコンピュータは計算機をたくさん並べて並列に計算することによって省電力・高速化を達成している。しかし、数百年にわたる気候シミュレー ションを高空間分解能で、かつ高速に計算するために、空間方向の領域分割を用いた並列化を行うと、どんなに計算機の並列規模をあげてもそれ以上高速化しな い限界が訪れる。本研究は時間方向並列化の手法を用いることにより、この速度限界を打破する階層型気候シミュレーション基盤を構築することを目的として実施した。これまでの研究開発によって、異なる2つの空間解像度を持つ大気シミュレーションを連成し、時間方向並列化を行うためのシステム開発を進めた。また異なる空間解像度で利用するモデルコンポーネントが違うことに起因する収束計算の反復数の増加を抑えるために、解像度が粗いモデルでのシミュレーションの再現性を解像度が高いモデルの結果に近づけるべく、機械学習手法を用いたデータ駆動型代理モデルの構築を試みた。今年度は代理モデルの精度を向上するための方策として、高解像度モデルシミュレーションから与える情報にサブグリッドスケールの状態量分布の不均一性を追加し、またモデルアンサンブルを活用し入力値に統計的な情報を追加することを試み、精度評価を行った。
|