最終年度である2021年度では,本研究計画「プレッシャーコントロール下でのスポーツスキル獲得の効果解明」に関して,バスケットボールとバドミントン,およびサッカーと水泳を対象に研究を進めた. バスケットボールにおいては,当初計画の「(A) 事前での十分な説明とVR空間内での再確認フェーズの確立」について筑波大学バスケットボール部ヘッドコーチと内容を点検していくことができた.HMD-VRを用いる状況にあって,練習で選手に求める動作と同等のものを被験者ができることを確認した.これは「(B-1) プレッシャー要因の高臨場感技術による的確な提示」に相当する.用意した状況下では,被験者はディフェンス選手として,オフェンス側からのプレッシャーを受けながら防御のための適切な行動を取ることが求められる.VR空間内での妥当な実験シナリオを構築できたことから,バスケットボール部の部員を被験者として実験を行い,選手の挙動を,頭部および視線の動きとして記録した.そこから選手評価に重要となりうる指標を提案することに成功した((B-2) プレッシャーコントロールレベルの計測). バドミントンにおいては,クリア時の高い軌道のシャトルが天井設置の照明と重なって眩しく見える状況がプレッシャーのかかる状態と捉え,その状況への対処を,スキルと見なして研究に取り組んだ.実験は筑波大学バドミントン部の協力を得て行い,バスケットボール同様,頭部と視線の動きを記録・解析した.実際の体育館での体験と,HMD-VRによるVR体育館での体験の違いを明らかにし,VR環境を利用したスキル評価への道筋を示した. 前年度から研究展開を始めたVR体験における脳波計測への展開についてはサッカーを対象にして引き続き研究を進める.プレッシャーとスキル獲得の間の関係を今後も明らかにするための研究に取り組んでいく.
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