研究課題/領域番号 |
19K22860
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 真也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50273850)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ロバストネス / スパイン |
研究実績の概要 |
神経細胞のスパインは、他の神経細胞から送られた情報を処理する場であり、体積が極端に小さいため分子数が数十~数個のオーダーしかなく、反応がゆらいでしまう(少数性ゆらぎ)。なぜこのように小さくても情報をロバストに処理できるのであろうか。本研究では、海馬や大脳皮質の興奮性神経細胞のスパインでシナプス可塑性の中心的な役割を担うNMDA受容体に着目して、スパイク入力タイミングに依存したNMDA受容体依存性のCa2+上昇の確率微分方程式モデルを作成した。このモデルを用いてスパインは小ささがもたらすゆらぎを利用して、入力タイミング情報をCa2+の上昇へどのようにロバストに変換するかを明らかにしつつある。また、申請者はすでに小脳プルキンエ細胞におけるmGlu受容体依存性Ca2+上昇モデルを作成して、mGlu受容体依存性Ca2+上昇が入力ゆらぎに対してロバストな応答を示すことを明らかにしている。そこで、NMDA受容体とmGlu受容体のモデルのネットワーク構造やパラメータの変化による情報伝達のロバスト性の変化を解析することで、少数性ゆらぎを利用した情報伝達のロバスト性が実現される普遍的なメカニズムを解明する。これらの特性はNMDA受容体やCa2+などにとどまらず、スパインの小ささが生み出す少数性による普遍的なものであると考えられる。そこでより一般化した抽象モデルを作成して、スパインの小ささが生み出すロバストな情報コードのメカニズムを明らかにした(鳥取ら、Phys.Rev.E 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的な解析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
NMDA受容体とmGlu受容体のモデルを情報伝達のロバスト性を保ちつつ、縮約することで、情報伝達のロバスト性の普遍的な特性、および特異的な特性を実現する生化学反応ネットワーク構造の特徴を明らかにする。最小限の要素からなる縮約モデルについて、ネットワーク構造やパラメータの変化に対する情報伝達特性の変化を解析することで、情報伝達のロバスト性が実現される最小の生化学反応ネットワーク構造を明らかにして、小ささが生み出すロバストな情報コードの普遍的な原理を抽出する。これによりスパイン、さらには小胞などの細胞内小区画にも適用可能な情報伝達のロバスト性の普遍的なメカニズムが明らかになると期待される。この解析結果から、人工情報処理システムとは根本的に原理が異なる新規の情報コードシステムを提唱する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度は理論的な解析を中心に行うため、主に研究員1名の雇用費とする。
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