研究課題/領域番号 |
19K22862
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣瀬 通孝 東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (40156716)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / アバタ / 空間知覚 / 身体性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,バーチャルリアリティ(VR)で自らが操るアバタの身体特性を変化させる実験系を駆使し,自己の身体特性が空間知覚に与える影響とそのメカニズムを明らかにすることである.この知見を応用して,想定される空間知覚の歪みに応じて身体特性を変化させることで現実と等価な歪みのない空間知覚の下にVRを体験可能にするアバタ表示手法を実現し,現状のVRでは現実での知覚と比べて空間知覚が大きく歪むという問題を解決する. 本年度は,前年度得られた知見である瞳孔間距離(IPD)と身体サイズの相互作用を考慮し,正しい空間知覚を伝達可能なテレプレゼンスシステムとして,人間の頭部運動に連動したロボットアームにより頭部回転運動時にも光軸とIPDを一定に保つことで,常に正しいIPDのもとに立体視が実現されるシステムを構築した. また,アバタの身体特性と空間知覚および空間内での振る舞いの関係を探索する研究として,アバタの見た目の抽象度がVR空間中の壁や障害物に対するユーザの振る舞いを変化させるかを調査した.VR環境中のボタンを順番に押して部屋を脱出するゲーム型のタスクにおいて,4種類(全身人型アバタ,全身ロボットアバタ,人の手のみのアバタ,コントローラのみのアバタ)のアバタを使用したユーザの行動を計測した.4種類のアバタは,形態として手のみを表示する条件と全身を表示する条件の計2条件,見た目として人間に近い条件とオブジェクトに近い条件の計2条件の組み合わせとして設定されている.タスクは最終的に壁をすり抜けるという非現実的な行動をしなければ絶対に解けなくなるよう設定されている.このときユーザが壁をすり抜けるまでの時間を計測した.その結果,全身人型アバタを使うと,他の条件と比べて非現実的な行動を行うまでの時間が有意に伸び,アバタの見かけがリアルなほどVR中での空間把握と行動様式が現実に近づくことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は空間知覚を補正する新規システムの設計・構築・評価に取りかかる予定であったが,COVID-19の影響を受けて対面での被験者実験による評価等に大きな制約が生じた.ある程度の基盤となるシステムの構築はおこなうことができ,特に状況に対応した計画変更によりテレプレゼンスシステムを活用してオンラインでも実験が可能なシステムを設計・構築することができてはいるため,遅れはあるものの軽微な影響に留まっている.研究期間延長により今後評価実験をおこなう予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得てきた,空間知覚や,空間把握に基づいた行動に対して影響を与えるアバタの身体特性に関する知見をもとに,遠隔作業時等にパフォーマンスが低下しないように表示数rアバタの身体特性を動的に変化させて知覚・行動の補正を可能にするシステムを構築し,評価していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は空間知覚を補正する新規システムの設計・構築・評価に取りかかる予定であったが,COVID-19の影響を受けて対面での被験者実験による評価等に大きな制約が生じた.ある程度の基盤となるシステムの構築はおこなうことができ,特に状況に対応した計画変更によりテレプレゼンスシステムを活用してオンラインでも実験が可能なシステムを設計・構築することができてはいるため,主に評価は次年度に持ち越すこととして次年度に予算を使用する計画とした.このために次年度使用額が生じている.
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