監視カメラや、自動車や航空機・ドローン等の移動体に搭載するカメラを考えると、これらのカメラは一般に画角に関して矛盾する要求を抱えている。すなわち、広い範囲を撮影するためには画角が広い広角カメラが望ましい一方、対象は一般に遠距離であるため、注目すべき被写体を高解像度で撮影するためには画角が狭い望遠カメラが望ましい。さらに、画角の狭い望遠カメラを用いた場合はカメラの撮影方向を被写体に向ける操作が必要となる。カメラ方向を制御する駆動機構と電動ズームレンズを持つカメラはパンチルトズーム(PTZ)カメラと呼ばれ、監視カメラ等で広く用いられているが、カメラ方向やレンズ間隔を機械的に駆動するため一般に低速であり、被写体が高速に移動する場合や、移動体に搭載するカメラでは利用が困難である。また機構が複雑であるため価格、耐久性、メンテナンス性にも問題がある。 本研究の目的は、焦点距離や画像中心等のカメラパラメータを自在かつ高速に制御できるパラメトリックカメラの概念を提唱し、その基本原理を確立することにある。カメラとは飛来する光線の強度を方向ごとに計測する装置である。通常のカメラではレンズの作用によって各画素と光線方向との対応付けがなされているが、この対応関係を動的に制御することで、本研究の目的が実現される。令和2年度は、提案手法による実験系を製作し、カメラ自体の方向を変えることなく撮影方向を制御できることが確認された。
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