研究課題/領域番号 |
19K22871
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
田中 由浩 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90432286)
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研究分担者 |
佐藤 真理子 文化学園大学, 服装学部, 教授 (10409336)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 触覚 / 粗さ感 / 皮膚特性 / 皮膚振動 / 個人差 / 感度 / 知覚モデル |
研究実績の概要 |
触覚は,自身の皮膚の変形や振動,温度変化を基に知覚されており,自己言及的である.すなわち,同じ対象物に触れても,個人の皮膚特性(厚みや硬度,乾燥など)や感度によって得られる触覚も異なる.本研究では,触知覚の基本要素で重要な粗さを対象とし,官能評価などを行い,計測した表面凹凸の空間情報,皮膚で生じる振動,摩擦力,皮膚特性および各刺激に対する触覚感度との関係を解析し,対象物,皮膚の力学的特性,皮膚に生じる機械刺激,感度,得られる触覚の一連の関係を明らかにすることで,個人の粗さ感と対応可能な主観的触知覚モデルを構築することを目的とする. 本年度は,主に皮膚特性と振動に対する感度,粗さ感との関係やその個人差について検討を行なった.振動子を用いた正弦波振動を与えた実験では,指先が指腹よりも敏感であることが明らかになった.また,指の姿勢は皮膚振動に影響を与え,指先が接触する姿勢では皮膚振動の強度が上昇する傾向にあり,特に指紋の模様との関係が示唆された.振動知覚に関わる皮膚特性の個人差を検討するため,皮膚の振動伝播を計測しクラスター解析を行なった結果では,高周波振動が減衰しやすい人と,そうでない人に別れることがわかった.ただし,感度の個人差との関係は有意に認められず,振動の感度には,皮膚特性よりも認知特性の方が個人差に影響している可能性が示唆された.また,押し付け力の感覚について検討した結果,個人差があるが,11人中6人に粗さによる押し付け力の感覚バイアスが認められた.押し付け力は皮膚振動強度にも影響するため,自然な動作で対象をなぞる際に考慮すべき特性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
指の姿勢や接触位置と粗さ感や振動に対する感度との関係を明らかにし,また,皮膚特性として振動伝搬の個人差の解析,およびその特徴と振動に対する感度との関係を明らかにした.運動に関する検討も加えて,粗さ感に関わる重要な因子である皮膚振動に関する個人差について多角的に検討を行えた.さらに,若者や高齢者に対して,皮膚の硬さの計測,および布地をなぞった際に官能評価と同時に皮膚振動と摩擦力の計測を実施しており,現在データ解析を行なっている.
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今後の研究の推進方策 |
若者や高齢者に対し行なった実験データを詳細に解析し,皮膚特性,摩擦力,皮膚振動,官能評価との関係性を考察する.また,本年度の成果を基に,指の姿勢や運動を制御した実験や,振動や空間分解能に関する事前の感度計測を行い,得られた知見を総合して主観的触知覚モデルの構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
振動に対する個人差について検討が進み,各種刺激を制御した実験を行うための装置購入を行わなかったため,次年度使用額が生じた.得られた知見を基に制御すべきパラメータを検討し,アクチュエータなど各種装置を購入し,実験を行う予定である.
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