研究課題/領域番号 |
19K22875
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
池本 周平 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (00588353)
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研究分担者 |
清水 正宏 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50447140)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 生物規範 / ニューラルネットワーク / 学習制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,カエルの脚を例に,生物の身体を制御対象と捉えて制御理論に則った制御・解析をするための基礎技術の確立を目指している. 当該年度では,主に,上記目的を達成するために利用する手法についての研究を進めた.この手法は,NNによって対象の状態方程式に相当する非線形関数を近似し,現状態・現入力を表す入力ベクトルを定めることで,そのNNから等価な線形状態方程式を抽出して制御に用いる手法である.当該年度では特に,NNによって予測される状態の系列から,各時刻で抽出される複数の線形状態方程式を用いて,モデル予測制御を行う手法を提案し,シミュレーションを通じた検証を行った.この手法では,NNから抽出される数式を時変線形システムとみなすことで,モデル予測制御を行う際の最適制御問題をLQ制御問題とし,必要な計算量を削減することを最大の着目点としている.この成果については,国内会議において発表を行った.また,これと並行し,ノイズを利用することでNNとして機能する数理モデルについても研究を進めた.このモデルは,活性化関数としてバイナリ値を返す不連続な活性化関数を用いた際,ノイズを印加することで確率共鳴を生じさせ,その応答を連続・有界な非線形関数とみて,通常のNNと同等の働きをさせる.このテーマは,ノイズの影響を無視することができない対象を扱う本研究計画の遂行において有用と考えられるだけでなく,生物が情報処理において積極的にノイズを利用するとされることを反映した数理モデルとしての意義もある.この成果については,論文誌への投稿に向けた論文執筆を進めている. 実験に関しては,カエルの脚を用いた実験に向け,多電極アレイの試作を重ねており,それを用いた電気刺激について予備的な結果が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画されていた制御手法に関する研究を遂行し,国内会議で成果方向を行っただけでなく,ノイズを利用するNNに関する研究についても並行して進め,成果報告に向けた着実な進展がみられる.また,実験環境を整える作業についても着実に進展しており,次年度における統合が期待できる.そのため,計画は概ね順調に遂行しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,NNからの数式抽出に基づく制御手法,およびノイズを積極的に利用するNNについて,個別に論文誌論文として報告することを目指す.また,それらの成果に基づき,本研究の目的である生物の身体を制御対象と捉えた制御・解析を進めるため,次年度では,カエルの坐骨神経を刺激した際の振る舞いについて,データ収集を進め,その動画データから状態空間を構成することで,成果の展開を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において研究代表者の所属機関の変更があり,研究環境の構築に時間を要したため,当初予定していた計算機の調達等について,年度内に完了することができなかった.また,これと並行し,実験に用いる装置の開発も後ろにずれ込む形となった.以上の理由により,次年度使用額が生じたが,研究計画自体はおおむね順調に進呈しており,次年度において当初計画に合わせた予算執行ができると考えられる.
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