本研究では,カエルの脚を例に,生物の身体を制御対象と捉えて制御理論に則った制御・解析をするための基礎技術の確立を目指している.前年度では,この目的を達成するために利用する手法として,NNによって対象の状態方程式に相当する非線形関数を近似し,現状態・現入力を表す入力ベクトルを定めることで,そのNNから等価な線形状態方程式を抽出して制御に用いる手法を提案し,当該年度では,オートエンコーダを用いて観測データから状態ベクトルとして利用可能な潜在ベクトルを得て制御に利用する手法などと組み合わせた一連の体系化を行い,国際論文誌論文として成果報告を行った. また,前年度から並行して取り組んできたノイズを利用することでNNとして機能する数 理モデルについても大きな進展が見られた.このモデルは,ノイズが印加された部分ネットワークのみが学習・推論可能な通常のNNとして機能するモデルであるため,ノイズの印加領域をパラメータとして異なる関数を1つのNNの部分領域に学習させることができると考えられる.当該年度では,この数理モデルの解析と上記着目点の検証を進め,背景にあるメカニズムの理解と応用方法の提示を目指した.その結果,ノイズがシステムの応答に利する現象として有名な確率共鳴を用いてメカニズムが説明できること,確率共鳴においてもノイズの印加領域という着目がないことから,確率共鳴を呈するシステムとしての新奇性も主張できること,および,実際に複数の異なる関数の近似が可能であることが分かった.この成果は,国際論文誌論文として成果報告を行った. カエルの脚を用いた実験は,コロナ禍により他機関との連携が困難であったため,多電極アレイを用いた電気刺激に関する予備的な結果を得るにとどまった.
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