研究実績の概要 |
本年度は,まず基本問題に立ち返り提案法の汎用性の向上について検討を行った.気象を含む様々な物理現象は偏微分方程式により変数の時空間発展が表現される.昨年度までに考案した方式の損失関数は,微分方程式に基づく制約式と,教師データ(観測量)との誤差項により構成しており汎用性にやや難があった.昨年,汎用性の高い方式としてPhysics Informed Neural Networks(PINN) (Raissi et al., 2019)が提案された.PINNは,ニューラルネットワークの出力値の自動微分を用いて偏微分方程式との誤差,初期値および境界条件の制約によって定義される.そのため,初期値および境界条件以外の教師データが不要となる. 本年度はPINNの枠組みに基づき,さらに高精度する方法を模索・検討した.提案法では,関連ある複数の偏微分方程式を含めてマルチタスク学習の枠組みで同時に学習することで,対象とする偏微分方程式を満たす変数値の推定精度を向上を図った.また,推定誤差の大きい点周辺を敵対的サンプル生成により動的に生成することにより,空間分解能を場所によって変化させることで推定精度の向上を図った.実験では,流体力学において基本となるBurgers方程式やPoisson方程式などを対象として,PINNと比較して提案法は変数値の推定精度が向上することを確認した.また,マルチタスク学習に使用する関連する偏微分方程式の係数をベイズ最適化により効率的に探索できることを実験的に示した.
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