日々の健康状態を定量化しながら,「概ね健康」の定義や維持メカニズムを明らかにする試みであり,新しい解析技術の構築により,生体内の行動生理的な変化を可視化することを目指す研究である.本研究では,概ね健康な普段の状態に体調を維持することを支援するシステムの構築に向け,行動生理学的な知見から,多種の生体データ情報を測定して,人の健康状態に関する知見を得ることを目的とする. 研究は,主な項目として,下記の3つから構成される. A)データ取得:種々の生体データ計測装置を装着した者に対して,「鎮静」の効果をもたらす刺激,ならびに,「興奮」の効果をもたらす刺激が作用した状況において, 多種の生体データ情報を取得する.今年度は主に,筋硬度に焦点をあて,鎮静状態と興奮状態をつくり,筋硬度の変化を測定した.また,上記の測定日に,各種生体指標(心拍数や活動量)のデータを計測した. B)データ解析手法の構築:多種の生体データ情報から,対象者の身体の状態に関連するデータ解析手法を開発する.筋硬度データの解析方法を開発し,データの解析を実施した.さらに,これらと各種生体(心拍数や活動量)の相関関係を調べた.さらに,活動量から心拍数を推定するデータ解析手法に関する研究を実施した. C)行動生理学的な検証:各種の生体データの中で行動生理学的に重要とされる項目の選定,構築された状態マーカの行動生理学的な解釈や意味付けを実施する.応用への展開や社会的なインパクトも含め,引き続き検証を進めた.
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