研究課題/領域番号 |
19K22879
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
嵯峨 智 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10451535)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 熱放射 / ハプティックインタフェース / レーザスキャン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,レーザ光源とガルバノミラーによる熱放射技術を利用し,空間中で仮想物体の触質感をユーザに提示しつつ,仮想物体の操作を可能にする錯触覚提示システムを実現することである.触覚を介した変形を伴う対象とのインタラクションは,粘土細工を筆頭に,無から有を作り出すことができる人間の最も根源的な創造の形とも言える.多自由度かつ拘束なし,高速な応答性をもつ仮想物体との高品質な質感インタラクションシステムを実現することで,情報化された仮想物体への直感的,質的インタラクションを容易なものとし,人の創造性を促進するデバイスのための触覚提示手法の確立を目指す. 我々が提案する熱放射を利用した触覚ディスプレイは,これまでにない概念をもっている.ひとつ目は,温覚と痛覚が遷移する温度(45℃周辺)を利用することで,熱を利用しながら触覚のような強い感覚情報を生起させる点であり,ふたつ目は,熱を電磁波である熱放射を利用して与え,高速かつ高精度な制御を可能にしている点である.この二つの特徴を最大限に利用することで,これまでのディスプレイでは実現できなかった多自由度かつ拘束なし,高速な応答性をもつ空間知覚を実現し,さらに,錯触覚で問題となる視覚情報と齟齬を生じない,視触覚情報を同一空間で扱えるディスプレイとなる.そして,人の創造性を促進するデ バイスとして視覚障害者を含む多くの人が容易に利用できる触覚技術となる. これまでに提示刺激として利用してきた刺激に加え,振動子など他の触覚ディスプレイで利用する高周波刺激の熱放射への応用を検討してきた.そのため,信号の分類,生成,提示に関して機械学習を用いた手法を適用し,いくつかの記録された振動から記録されていない振動信号の生成を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザ光源の出力は電圧制御が可能である.また,ガルバノミラーについても電圧制御によりパンチルト角を決定できる.そこで我々は Arduino Uno とMCP4922 を併用した DA 変換によるコントローラを構成した.すなわち,投光量,スキャンの大きさ,投光の中心位置はArduinoおよびPCから制御可能である. これらの制御性を活かし,本年度は提示刺激の多様性に関しての研究を進展させた.すなわち,提示刺激として利用してきた刺激に加え,振動子など他の触覚ディスプレイで利用する高周波刺激の熱放射への応用を検討してきた.そのため,信号の分類,生成,提示に関して近年脚光をあびているGenerative Adversarial Network を用い,WaveGANとConditional GANを組み合わせることで,いくつかの記録された振動から入力ベクトルの組み合わせを変更させるだけで,記録されていない振動信号の生成を実現した.また,これら生成された触覚信号について,従来型の触覚ディスプレイ上での心理物理実験を通じ,記録された信号との差異を表現可能なことを検証した.
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今後の研究の推進方策 |
我々は,空間中での触覚情報提示手法として,熱放射を利用する手法を提案した.これまでのハロゲンランプにかわり,レーザ光源を用いたシステムを構築し,簡単な照射テストにより,システムの実効性を検証した.また,金スパッタによる反射率の向上を実現した. これらの制御性を活かし,本年度は提示刺激の多様性に関しての研究を進展させた.すなわち,提示刺激として利用してきた刺激に加え,振動子など他の触覚ディスプレイで利用する高周波刺激の熱放射への応用を検討してきた.そのため,信号の分類,生成,提示に関して近年脚光をあびているGenerative Adversarial Network を用い,WaveGANとConditional GANを組み合わせることで,記録されていない振動信号の生成を実現した.また,これら生成された触覚信号について,従来型の触覚ディスプレイ上での心理物理実験を通じ,記録された信号との差異を表現可能なことを検証した. 今後は本装置による心理物理実験を通じ,適切な刺激手法について検討をすすめる予定である.
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