研究課題/領域番号 |
19K22881
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
内川 惠二 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (00158776)
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研究分担者 |
鈴木 雅洋 常磐大学, 人間科学部, 助教 (30397046)
福田 一帆 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (50572905)
鯉田 孝和 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (10455222)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 色恒常性 / 色覚メカニズム / 先験的知識 / 動物発達実験 / 照明視環境 |
研究実績の概要 |
本研究は色恒常性の成立に必要な先験的な知識は生得的か習得的か(実験1)、必要な先験的な知識とは何か(実験2)を解明することを目的とする。本年度は実験1を行なった。ニワトリ(白色レグホン)のヒナを被験体として、有精卵から孵化して成長するまでの約1ヶ月間、視環境の色度輝度分布を統制して飼育し、その後学習課題とテスト課題を実施した。 飼育箱の照明ランプには、白色のLED(W光)、および赤色のフィルター付きLED(R光)を用いた。飼育箱内面に4種類の色票(白色色票は含めない)を貼り付け、2種類の視環境条件:(a)W光とR光とで1日数時間ずつ照明(照明光可変条件)、(b)W光のみ(照明光一定条件)で飼育した。 学習課題およびテスト課題には、継時的に呈示される3枚の色票(ターゲット(T)1枚、ディストラクタ(D)2枚)の中からTを学習させ、その後テストするオペラント課題を採用した。学習時の照明光は飼育時と同じ、テスト時の照明光はW光とR光とを混色した薄赤光(WR光)を用いた。 予備実験として被験体は明度によりターゲットを明度により学習できることが示されたため、色票の選択には照明光による明度の変化を考慮した。Tとしては学習時とテスト時で明度が異なる色票を採用した。D1としてはテスト時での分光反射光がターゲット色票の学習時での分光反射光と等しくなるように、D2としては学習時とテスト時で明度が異なるが、色度変化がTとは反対方向になる色票を選んだ。 実験は全条件16個体の被験体を用いて開始したが、予備実験で1個体、本実験では(b)条件で2個体しかテスト時まで生存しなかった。テストの結果では、個体Aはディストラクター色票①を、個体Bはターゲット色票を選択した。AとBの結果が分かれた原因は、今後、検証の必要があるが、A個体の存在は色恒常性が発達過程で獲得する習得的なものである可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究の全計画のうちの実験1の装置を作製し、実験条件を整備し、実験を開始できた。結果は不十分であるが、目的達成のための方法が整い、必要最小限の実績は得られた。 ただし、動物実験を担当している研究分担者の鈴木の所属機関の異動が決定し、動物実験施設が次年度以降は使用できないこと、新型コロナウィルスの感染拡大により実験実施が困難であったことが研究活動へ影響した。そのため、当初の計画どおりに研究は進展していない。 これらのことを総合的に鑑み、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は動物実験を常磐大学で行なったが、研究分担者の鈴木が常磐大学から異動となったため、来年度からはこの動物実験の施設が使えないことになった。したがって、今後の研究計画の変更を余儀なくしている。来年度以降は、まず、動物実験が行える代替えの研究施設を探すこと、さらに、本年度は動物実験が行えたため、ある程度の実験データが得られたので、そのデータを基にして、人間の心理物理実験を行う研究計画を立案して実行することを研究の推進方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」欄で記載した通り、本年度に動物実験を担当した研究分担者の鈴木の所属機関の来年度の異動が決定し、動物実験施設が来年度以降は使用できないことになった。このことに加えて、新型コロナウィルスの感染拡大により実験実施が困難であったことが研究活動へ影響した。そのため、当初の計画どおりに研究は進展していない。来年度以降は、動物実験が行える代替えの研究施設が見つかれば動物実験を継続するが、そうでない場合は、動物実験の既存の知見と本年度獲得した動物実験のデータを基にして、人間の心理物理実験を計画して実行する。このために、来年度に繰り越した予算を使用する計画である。
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