研究課題/領域番号 |
19K22882
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
柴田 史久 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (80314425)
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研究分担者 |
木村 朝子 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (20324832)
田村 秀行 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (10367998)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 光学シースルー / 複合現実感 / 影表現 / 錯覚 / 透明物体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,複合現実型情報提示を実現するための一方式である光学シースルー(Optical See-Through; OST)型映像提示装置において仮想物体の影(キャストシャドウ)を提示する技術の実現である.OST方式ではその原理上,光を加算することしかできないため,現実の光景の光を減衰させないと実現できないキャストシャドウを表現することが難しい.そこで本研究課題では,OST型の映像提示装置において減光機序に依らずにキャストシャドウを提示する新たな試みとして,錯視を利用した手法の確立に挑戦する. 本年度については,昨年度に引き続き透明物体の影とコースティクスを表現する手法について検討した.具体的には,錯視を用いることで,実世界の輝度を減衰することなく疑似的に影を表現し,そこに,透明物体が作り出すコースティクスを付加することで影とコースティクスを再現することを試みた. さらに,昨年度の取り組みの中で発見した課題,すなわち,元々CGが半透明に表示されるOST方式において,仮想の透明物体を如何にして表示するのかという新たな課題について取り組んだ.人間が実物の透明物体を観察する際,表面像や屈折像,反射像などの複数の像が混じり合い特有の視覚効果が発生する.しかし単純にコンピュータグラフィクスで透明物体を計算し,AR/MR 用HMDで提示した場合,計算コストとディスプレイ機構上の問題からこれらの効果が十分に再現されない.そこで,特に透明物体の表現が難しい光学透過型HMDを用いて,観察者の視線情報を基にレンダリングを動的に変更することで疑似的に視覚効果を再現し,実物と仮想の透明物体の不整合の緩和を目指す手法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のポイントは,錯視を利用することで減光機序を用いずにキャストシャドウを知覚させることができるか否かを明らかにすることである.平面を背景とした場合については,当初の想定通りにキャストシャドウを知覚させることができ,その成果についても論文にまとめることができた.また,派生的な研究として,元々CGが半透明に表示されるOST方式において,仮想の透明物体を如何にして表示するのかという新たな問題を発見し,この課題についての検討を深めた.このことから予定通り順調に進んでいると考えている.一方,平面ではない背景については,対象の領域の形状等の情報を取得する手法についての検討が進んでおらずこの点については,新たなセンサの導入などを検討する必要があるなど遅れが出ている.
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今後の研究の推進方策 |
平面を背景とした場合については,当初の想定通りにキャストシャドウを知覚させることができた一方,平面ではない背景を対象とした場合についての検討が遅れているため,この部分に関する研究を進める.新規に導入を検討しているOST-HMD(Microsoft HoloLens2)に搭載されたセンサを利用して奥行き情報を取得し,それをもとにした手法について検討する.そのうえで,本研究の総括および次なる展開を検討していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階では,設備備品として,新たに光学透過型ヘッドマウントディスプレイ(OST-HMD)を購入する予定にしていたが,視線検出機能付きOST-HMD(Magic Leap One)をNTTドコモより貸与してもらうことが決まったため,購入が不要になった.また,年度末に予定していた学会がコロナウイルスの影響で,オンラインでの開催となったため,予定していた渡航費が不要になった.今後は,NTTドコモよりの貸与期間が終了し機材を返却したため,新たに別のタイプの光学透過型ヘッドマウントディスプレイ(Microsoft HoloLens2)の購入を検討する.
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