人工知能には,記号処理とパターン処理の2つの対立する代表的なアプローチがある.従来の人工知能では,2つのアプローチを問題領域に応じて選択し,それぞれ別個に応用されてきた.本研究では,これまでに別個で使われていた記号的人工知能とパターン的人工知能の判断を有機的に統合する手法を解明することを目的とする.そのために,本研究では,心理学の理論に基づき,この2つを統合することを目指す.2020年度は,1年目に開発した機構・実験環境を用いて,下記の2つに分けて,研究開発を行った. 1.ストリームデータからの記号的知識の生成手法の解明 パターン処理と記号処理の関係を解明するために,パターン処理が得意とするストリームデータを対象として,そこから記号的知識を生成する手法の解明を行った.具体的には,1年目に構築した運転シミュレーション環境を用いて,ストリームデータを生成し,そこから記号的知識への変換を行うアルゴリズムの設計を行った. 2.2つの処理手法の統合 1年目の考察を踏まえ,記号的に表される知識を利用できる強化学習の設計,および実装を行った.その結果,2つの処理手法を統合することで,少量の知識を利用するだけでも,大幅に学習を加速できることができることが分かり,複数のドメインにおいて,有効性を示した.
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