研究課題/領域番号 |
19K22889
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
石垣 陽 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任准教授 (50723350)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 弱視 / ゲーミフィケーション / 遮蔽法 / ホワイトスクリーン / タブレット |
研究実績の概要 |
世界で最も小児弱視が多発(年間83万人)する途上国インドにおいて、ゲームで遊ぶことにより視覚野を効果的に刺激した視能訓練を実証する。プロジェクターやテレビ等のデバイスに合った「特殊LCD」(ハード)及び「弱視訓練ゲーム」(ソフト)を開発し、インドでの「臨床試験」と評価を行うことで進める。本年度は主にゲーム(ソフト)の基本コンテンツ作りと、臨床試験に向けた基礎調査・分析及び文献化を行った。 ハードについては、特殊な光学特性を持つプロジェクター用のXプリズムの製作を行うため、実際に高輝度プロジェクターを購入・分解して基礎データを計測した。 ゲームについては現地の病院で、ポジティブ・ネガティブの両面からキャラクターの精査を行った。ポジティブ面(地元の子供に受け入れられやすい)としては有名キャラクター(特に日本製のアニメ)が人気であることがわかった。そこでオリジナルで日本的なアニメキャラクターを創作し、ゲームのプロトタイプを作製した。 一方でネガティブ面(地元の子供たちにとって避けた方が良い表現)として、イスラム教やヒンドゥー教に関連する表現のうち、文化的に受容できないものがいくつかあることがわかった。そこでキャラクターのデータベース(DB)を作成し、問題があるキャラにチェックをつけてもらう簡易チェックシートを整備した。これにより、文化宗教面からも受容性に問題の無い、安心安全なゲーム作りを行えるようになった。 基礎臨床調査については、初期調査から得られたデータのとりまとめが完了したので、ジャーナル化を準備した。従来の遮蔽法と比較して、ゲームによる訓練では視力改善が早期に見込めることがわかった。この他、国内で一件の発表を行った。 なお次回渡航では、日本製の玩具で視能訓練に活用できるものが無いかも併せて検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主にゲームのコンテンツ作りと、基礎臨床調査結果の文献化を行った。 ゲームについては現地の病院にて、地元の子供たちに受け入れてもらえる(ポジティブ面の)ゲーム内容の調査と、避けてほしい(ネガティブ面の)ゲーム内容の調査を行った。ポジティブ面としては有名キャラクター(特に日本製のアニメで、クレヨンしんちゃんやドラえもん)が人気だがライセンスの問題から実装は難しい。そこでオリジナルで日本的なアニメキャラクターを創作することとし、ゲームのプロトタイプを作製した。 一方でネガティブ面として、イスラム教やヒンドゥー教に関連する表現のうち、文化的に受容できないものがいくつかあることがわかった。例えば暴力的なものや、多宗教の神様を連想させるようなものなどである。そこでキャラクターDBを作成し、問題があるキャラにチェックをつけてもらう簡易チェックシートを整備した。これにより、文化宗教面からも受容性に問題の無いゲーム作りを行えるようになった。 基礎臨床調査については既に終わった初期調査のデータとりまとめが完了したので、ジャーナル化を準備した他、国内で一件の発表を行った。 来年度は、プロジェクターの大画面による訓練装置を実証する予定である。そのため、特殊な光学特性を持つプロジェクター用のXプリズムの製作を行うための基礎データを測定している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度作成したゲームの臨床試験に加えて、プロジェクターやテレビ方式の大画面による訓練装置を開発する予定である。事前準備としてホワイトスクリーン化が見込まれるドイツ製の高輝度な3LCDプロジェクターを購入し、分解して内部構造を確認した。今後、専門業者にて改造と、特殊Xプリズムの製作(主にR,G,Bの波長に対する無偏光のスパッタ反射膜形成)を行う。 またインドでの臨床試験の経過について引き続き観察し、分析結果をとりまとめる。 また現地の医師とのブレーンストーミングから、日本の100円ショップで売られているような安価・単純なおもちゃのうち、視能訓練に有効と思われるものが多数あることがわかった(例:マグネット式の釣り堀ゲーム、3D立体パズルなど)。これらは費用がかからず、また現地の貧困層の家庭にも普及が見込まれるため、サンプルをインド側の病院に発送し、試用してもらう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により執行予定だった学会参加が見送られたため。 翌年度分として請求し、翌年度の学会発表・投稿等にて執行する予定。
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