研究課題/領域番号 |
19K22891
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長谷川 英之 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00344698)
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研究分担者 |
藤原 久美子 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (60404737)
長岡 亮 富山大学, 学術研究部工学系, 特命助教 (60781648)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波イメージング / ビームフォーミング / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究では,配列型超音波振動子を用いて生体組織からの散乱波を受信して得られる多チャンネル信号から深層学習により生体の断層像を高精度に推定する次世代の超音波イメージング法の開発を行う.本年度は以下の検討を行った. (1) 深層学習の超音波イメージングへの適用: 深層学習の超音波イメージングへの適用可能性の検討を行った.超音波画像には,生体からの超音波散乱波どうしの干渉により,スペックルと呼ばれる,生体組織の構造,特性とは無関係な斑点状のパターンが発生する.本研究では,より生体組織の構造,特性を反映した超音波画像を構築するために深層学習の適用を試みた.人工ニューラルネットワークを学習させるためには多数の学習データが必要となり,実験により多数の学習データを得ることは困難である.そこで,実際の超音波イメージングに用いる超音波デバイスの送受信特性を考慮した超音波送受信シミュレーションにより学習データを生成するプラットフォームを構築した.本シミュレーションでは,まず対象の特性として超音波散乱強度分布を設定し,設定した対象から得られる超音波エコー信号をシミュレーションした.シミュレーションにより得られたエコー信号から構築した超音波画像を入力とし,あらかじめ設定した超音波散乱強度分布を教師データとして人工ニューラルネットワークを学習させた.学習させた人工ニューラルネットワークを,実際にヒトで計測した超音波エコー信号に適用したところ,スペックルパターンを低減できることを確認した. (2) 高精度なイメージングを実現するための適応ビームフォーマに関する検討: 超音波画像の高精度化のための適応ビームフォーミングに関する検討を行った.配列型超音波探触子の各素子で受信した信号から超音波画像を構築する際に,それら信号への重みを適応的に決定する手法に関して検討し,従来法に比べ高精度化できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における重要な要素である,超音波エコー信号に基づき人工ニューラルネットワークを学習させる方法,および人工ニューラルネットワークに学習させるための適応ビームフォーミング手法に関して見通しが得られたことから,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した適応ビームフォーミングを,人工ニューラルネットワークにより実現する手法について検討を行う.そのためにまず,構築した学習データ生成用シミュレーションプラットフォームを,適応ビームフォーミングにおける素子信号への重み決定において必要となる学習データセットを生成できるように改良する.学習させた人工ニューラルネットワークは,超音波散乱特性が既知であるファントムを用いて評価する.実際の計測においては,超音波の伝搬減衰などにより超音波音場特性が変化するため,それらの影響についても検討を行う.また,超音波エコー信号を計測するための配列型超音波探触子についても,申請者が独自に開発した積層型振動子を用いて基本波だけでなく高調波も計測することを可能とし,適応ビームフォーミングへの応用を検討する.
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