研究課題/領域番号 |
19K22900
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
北城 圭一 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 教授 (70302601)
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研究分担者 |
座間 拓郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (30825469)
末谷 大道 大分大学, 理工学部, 教授 (40507167)
河西 哲子 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (50241427)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 注意欠陥・多動性障害 / 脳波 / ノイズ誘起 / コンシステンシー |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、同一ノイズ時系列で変化するダイナミックなチェッカーボード刺激を繰り返し提示する視覚刺激として被験者に提示したときに、異なる試行間の脳波波形の一致として観察されるコンシステンシー特性を発見した。このノイズ誘起脳波ダイナミクスの特性と発達障害特性との関連を解明することを目的として研究を進めた。 まず、実験課題の検討を行った。これまでの研究代表者らの研究では、受動的にノイジーなチェッカーボード視覚刺激を見ているときのノイズ誘起脳波反応、及び、自閉症スペクトラム指数(AQ)のスコアを理化学研究所において取得済みである。このノイズ誘起脳波の実験データの解析を進め、取得したAQスコア、及び、そのサブスコアと、コンシステンシーに関する脳波ダイナミクスの特徴量との関係の解析を進めた。脳波ダイナミクスの特徴量とAQスコアの重回帰モデルの構築を進めたが、必ずしもクリアなモデルが構築できなかった。しかし、注意や覚醒度を反映すると思われるアルファ波のパワーとコンシステンシーの脳波特徴量との間に関連があることが明らかになった。そこで被験者のトップダウン、ボトムアップ的な注意レベルを統制する視覚実験パラダイムが重要であると考えて、その検討を進めた。 さらに生理学研究所での脳波計測実験環境と解析環境の構築を進めた。外部環境からの電源ノイズ等を軽減して脳波計測を行うためのシールドルームと高いフレームレートで精度よく刺激を提示できるディスプレイを導入し、心理物理実験と脳波計測システムの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生理学研究所での実験計測環境と計算環境の構築はある程度は進んだ。特にシールドルームの年度内の導入が完了し、脳波計測環境はほぼ整った。しかしシールドルームの導入スケジュールが予定より遅れてしまったために実験を行うことが難しかった。また今年度後半は、新型コロナウイルスに関する社会状況と感染症防止対応の問題で外部被験者を呼んでのヒトでの実験を行うことが理化学研究所、生理学研究所で困難であった。このため注意条件を統制した新たな視覚刺激パラダイムでの実験計測を行うことができなかった。したがって計画はやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、ボトムアップ的な注意とトップダウン的な注意条件を統制しながらノイズ誘起脳波を計測する視覚実験パラダイムを最適化して、確立する。これにより、個人の注意状態の変化で左右されにくいノイズ誘起を抽出し、脳波非線形ダイナミクスの個人差を定量化する。 自閉症スペクトラム障害(ASD)という概念は、社会的、コミュニケーション障害のレベルを健常者まで含んだ連続体(スペクトラム)としてとらえる概念である。またADHDに関しても同様の捉え方がある。そこで、特に発達障害の診断を受けていない一般成人を対象として、注意条件を統制しながらのノイズ誘起脳波計測を行う。また、ASD傾向の定量化は、自閉症スペクトラム指数(AQ)を用い、ADHD傾向はAdult ADHD Self-Report Scales:ASRSを用いる。いずれも、日本語版の質問紙テストを用いる。 脳波解析については、脳波試行ペアワイズでの正準相関解析(Canonical Correlation Analysis: CCA)を用いた手法を既に開発済みである。まずはこの手法を用いて、試行間同期を定量化する。また試行間同期以外にも、視覚刺激と脳波の一般化同期や条件付きリアプノフ指数などの非線形ダイナミクス特徴量の解析も試みる。さらに、重回帰手法やさまざまな多様体学習手法を用いて、ノイズ誘起脳波の特徴量とASD(AQスコア), ADHD(ASRSスコア)傾向や課題パフォーマンスとの関連の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験環境の構築が遅れたために実験が行えず人件費・謝金を使用できなかった。また、年度後半に新型コロナウイルスの社会的状況のために計画していた出張を行うことができず、旅費として使用できなかった。2020年度は社会的状況と必要性に応じて、出張を行い、旅費を使用する。また実験を行うことで、人件費・謝金を使用し、翌年度分として請求した助成金と合わせての合理的な使用により研究を進める。
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