研究課題
海水中のナノプラスチックの測定法を検討し、実際の海水に適用した。以下確立した手順を示す。海水を20Lのステンレス製蓋付きバケツ5本に採水し、研究室に車で輸送後、窒素ガス加圧型ステンレス製大型ろ過器でガラス繊維ろ紙GF/Fでろ過し、ろ液100Lを得た。ろ液をUFラボモジュールに中空糸膜(APH-1013D公称分画分子量50000)を装着し、600mL/minの流速で合計24時間海水を循環させ、コロイド粒子を約500 mLまで濃縮、脱塩を行った。さらに凍結乾燥を行い、100mL程度に濃縮した。コロイド濃縮液に過酸化水素水を加え、有機物の酸化分解を行った。さらに、水酸化カリウム溶液を加えて、有機物の加水分解を行った。有機物分解処理を施したコロイド濃縮水溶液を分液ロートに移し、ヨウ化ナトリウム飽和溶液とヘキサンを加え、1分間振とう後、ヘキサン層を捕集した。ヘキサン層を濃縮し、テトラヒドロフランに転容した。この溶液をShodex社製CLNpakPAE-2000(20 mm i.d. x 300 mm)ゲルクロマトグラフカラムに流速4 mL/minで通し、0 - 12分の画分をポリマー画分として捕集した。分画位置は予めポリスチレンのキャリブレーションキットと紫外線検出器などを使って決定しておいた。ポリマー画分は50 uLまで濃縮後、20uLを錫カップに分取し、溶媒を乾燥させた後、熱分解GC-MSに注入した。熱分解装置は摂氏700度に加熱し、ポリマーの分解を行った。m/z=91でスチレントリマーを、m/z=57でアルカンをモニターし、それぞれポリスチレンとポリエチレンの測定を行った。東京湾海水中からポリスチレンは検出されたが、ブランクと同等であり、有意ではなかった。一方、アルカンのピークはほとんど検出されなかった。ポリエチレンのヘキサンへの溶解度が低いことが原因と考えられた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
水環境学会誌
巻: 44 ページ: 35-42
Environmental Monitoring and Contaminants Research
巻: 1 ページ: 54-65
10.5985/emcr.20200006