研究実績の概要 |
環境中の元素が及ぼす健康影響をmiRNAの発現解析によって解明することを目的として、培養細胞を用いた解析を実施した。昨年度までに同定・解析された元素関連miRNAについて、更に詳細な発現解析及び機能解析を行った。これまで主に皮膚関連細胞をターゲットとして解析を行ってきたが、元素によって誘発される可能性のある臓器は多岐にわたると予想されるため、より多くの臓器を構成する細胞に対して発現解析・機能解析を行うこととした。対象となる細胞は、肝臓細胞、胎生線維芽細胞、肺表皮細胞、神経細胞を選択した。各細胞に対して様々な元素曝露試験を行い、その細胞の生存率や細胞の機能発現への影響を濃度依存的、時間依存的な要素を含めて解析を行った。昨年度までの研究で皮膚細胞において関連性が高いと考えられたmiRNA (#001~#009)のうち、#001, #003, #004, #006, #007, #009のmiRNAのついては肝臓細胞、胎生線維芽細胞、肺表皮細胞、神経細胞における元素曝露において有意な発現量の変化が観察された。また、#001, #004, #007のmiRNAについては元素曝露によって発現量が有意に上昇し、#003, #006, #009のmiRNAは元素暴露によっては発現量が有意に低下した。#002のmiRNAは肝臓細胞では元素曝露によって発現量は有意に低下し、肺表皮細胞では元素曝露によって発現量が有意に上昇し、それ以外の細胞では変化は観察されなかった。#005, #008のmiRNAは肝臓細胞、肺表皮細胞では元素曝露によって発現量は有意に低下し、それ以外の細胞では変化は認められなかった。これらの結果は、我々が新規に同定した元素関連miRNAは皮膚細胞だけでなく、人体を構成する様々な種類の細胞に対しても応答を行うことが明らかとなった。
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