研究実績の概要 |
元素が与えうる健康影響をmiRNAの発現解析によって明らかにすることを目的として、特に皮膚は様々な環境因子に曝露する最前線 であるため、ヒト皮膚角化細胞株(HaCaT)及びメラノサイト培養細胞株(malan-a)を用いて研究を実施した。HaCaT及びmelan-aに対して複数の組み合わせで元素曝露を実施し、曝露期間1日ー5日間で条件を変えつつ細胞毒性発揮の条件を解析した。また、毒性発揮が最大 となるタイミングでmiRNAを抽出し、miRNAの発現パターン解析を行った。 解析の結果、候補miRNAはHaCaTとmelan-aの増殖活性に影響を与えるmiRNA (#001, #002, #003)、HaCaTとmelan-aのアポトーシスに影響を及ぼすmiRNA(#004, #005, #006)そしてmelan-aにおいてメラニン産生に影響を及ぼすグループの3グルー プに大別された。この結果は、候補miRNAが細胞の表現型発露に重要な機能を果たしており、これまで知られていない新た なネットワークが存在することを示唆している。 同定された元素関連 miRNAに関してinhibitor, mimicタイプのmiRNAを用意し、transfectionを実施することで機能解析を行った。その結果、HaCaTとmelan-a両方の増殖活性に影響を及ぼすmiRNA、HaCaTの増殖活性にのみ影響を及ぼすmiRNA、HaCaTとmelan-aの両方のアポトーシスに影響を及ぼすmiRNA、melan-aのアポトーシスにのみ影響を及ぼすmiRNA、melan-aにおいてメラニン産生に影響を及ぼすmiRNAが存在することが明らかとなった。これらの 結果は、miRNAの機能を人工的に制御することで元素誘発性疾患の予防・治療法開発に寄与できる可能性が示唆された。
|