研究課題/領域番号 |
19K22908
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
角皆 潤 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50313367)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 溶存酸素 / 呼吸速度 / 光合成速度 / 安定同位体 / トレーサー / 海洋 / 湖沼 / 伊勢湾 |
研究実績の概要 |
本研究は、酸素の極微量安定同位体である質量数17の酸素原子(17-O)を標識 (トレーサー) に用いた、高感度かつ高確度、そして簡便な水試料中の呼吸速度定量法を開発する。具体的には、17-Oを濃縮した酸素分子(17-O2)を密閉容器中の水試料に添加し、一定の培養期間中に進行する呼吸で増大するH水分子中の17-O量を高精度に定量化することで、呼吸速度を求める。 本年度は、以下の5項目について研究を行った。①17-O2準備: 17-O純度50%の水を購入するとともに、内容積1 mL程度の小型の電解分解セルを自作し、この中で水電気分解することで17-O2を作成し、容器中に保存した。②添加法開発:市販のガスタイトシリンジと分注器を組み合わせ、高い再現性を示すガス分注器を製作した。また17-O2添加量の絶対値を、以下の方法で正確に見積もった。(1) 自然同位体組成の純酸素ガスを内容積既知の容器中に用意する、(2) ここに各試料に対して添加する場合と同様に17-O2を添加した、(3) 添加前後の純酸素ガスの17-O/16-O 比の微小変化を自然同位体比専用の気体質量分析計を用いて高精度定量し、これを元に17-O2添加量を算出した。③培養容器の選定とブランク量等の評価:超純水を試料として、多種の容器やゴム栓の組み合わせの中から、ブランクH217O量を最も低く抑えることの出来る容器を選定した。また、ブランクH217O量の絶対値や、その再現性から、本手法の定量下限や測定精度を見積もった。④大学構内のため池の水を使って、従来法との比較実験を行い、新手法の精度や確度を検証した。⑤伊勢湾 (最大水深38 m) で、2019年9月に試験観測を実施し、良好な結果を得た。また成果を2019年度に国内の学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分析法開発に目処が立った。国内学会における発表を完了し、論文投稿段階に移行した。また当初計画の無かった日本海でも、観測を実行した(現在分析中)。
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今後の研究の推進方策 |
夏季に大規模な貧酸素水が湾内の海底面上に発生することが知られている伊勢湾 (最大水深38 m) で、2020年9月に観測を実施する。具体的には、呼吸速度を水柱各深度と海底面上のそれぞれで実測し、貧酸素水発生の主要因がどちらにあるか明らかにするとともに、それぞれの大きさを規定する環境因子を考察する。また、有光環境下で採取した試料について、現場と同じ有光環境下の培養以外に、無光環境下でも同時に培養して得られた呼吸速度を比較し、光環境の影響を無視する暗瓶法に問題が無いか検証する。観測は三重大学の練習船「勢水丸」を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額は3000円未満と会計上の誤差であり、次年度早々に試料容器の購入費として使用する。
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