研究課題/領域番号 |
19K22911
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
国末 達也 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90380287)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 残留性未知物質 / バイオアッセイ / 機器分析 / 核内受容体 / 生物蓄積 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2次元ガスクロマトグラフ飛行時間型高分解能質量分析計(GC×GC-HRTOFMS)および高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-HRMS)を用いた機器分析技術と細胞内受容体介在活性の評価が可能な in vitro アッセイ(CALUX:Chemical Activated Luciferase EXpression)を駆使し、愛媛大学沿岸環境科学研究センターの生物環境試料バンク(es-BANK)に冷凍保存されている多種類の環境・生物試料に適用することで、環境残留性・生物蓄積性未知有害化学物質の探索を世界に先駆けて試みることにある。 初年度は、生物組織に蓄積する多様な有機ハロゲン化合物の網羅的スクリーニングを実施するため、GC×GC-HRTOFMSの分析条件を設定した。BPX5とBPX50を連結したGC×GCカラムが最も良好な分離能を示し、実際にPOPs標準溶液を測定した結果、同一の2次元トータルイオンクロマトグラム (2D TIC) に溶出し、一部のPCB異性体を除くすべての成分が分離することを確認した。また、モジュレーションピリオドを最適化した結果、2次元カラムの最大保持時間を5秒に制御した場合、最も良質な2D TICが得られた。2D TIC上で観測された各標準物質の質量誤差は±10 ppm以内にあり、カラムブリード等による夾雑イオンの干渉がないことも同時に確認した。それらの保持時間 (1tR: min, 2tR: sec)、精密質量 (u)、ハロゲンクラスターの同位体比、そしてフラグメント情報をすべてライブラリー化した。 並行して、生物組織の抽出液を用いたアリル炭化水素受容体(AhR)のアゴニスト活性が検出できるCALUX法の構築に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、質量校正物質(PFK)によりHRToFMSの測定パラメーターを最適化し、有機ハロゲン化合物の分析に適したGC×GCカラム選定とPOPsの分離能を検証した。また、POPsを含む多様な有機ハロゲン化合物の標準品をGC×GC-HRTOFMSで測定し、それらの保持時間、精密質量、ハロゲンクラスターの同位体比、そしてフラグメント情報をすべてライブラリー化した。現在、瀬戸内海の沿岸域で採取した二枚貝を対象に、組織中の化合物を可能な限り網羅分析できるようゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による脱脂のみでクリーンアップをおこない、得られた最終溶液を最適化したGC×GC-HRTOFMS条件でスクリーニング分析している。 また、すでにダイオキシン類の機器分析データが存在する野生生物の組織試料を硫酸処理し、ダイオキシン類CALUX (DR-CALUX)を用いて総AhRアゴニスト活性と毒性寄与物質の解析を進めている。並行して、酸処理で消失する昜分解性物質を含む多様なAhRアゴニスト活性を評価するため、組織試料の抽出液をGPC処理しCALUXで活性を確認している。その際、DR-CALUXはpolycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs)などの昜分解性AhRアゴニストを代謝する可能性があるため、アッセイ細胞による代謝の影響を抑えるよう改良されたPAH-CALUXも検討している。 このように全体として研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
有機ハロゲン化合物の標準品を用いて最適化したGC×GC-HRTOFMSスクリーニングで得られた2D TICから、NISTライブラリーサーチや本年度に作成したオリジナルデータベースと比較・照合し、既知・未知物質の分子構造を確認・推定する。現在分析している低次生物の二枚貝だけでなく、海洋生態系の高次に位置する鯨類を対象に、組織の粗抽出液をGPC処理しGC×GC-HRTOFMSでスクリーニング分析をおこなう予定である。得られた知見から既知・未知物質の生物濃縮性を評価する。 また、すでにGC-HRMS分析で組織中のダイオキシン類濃度が明らかとなっている野生鳥類を対象に、同一の抽出液を用いたDR-CALUXによる総AhRアゴニスト活性との比較から毒性同定評価を試みることに加え、寄与物質(PCDD/FおよびDL-PCB同属体)を評価する。野生生物は、環境残留性・生物蓄積性を示すダイオキシン類だけでなく、環境中で化学的に不安定なAhRアゴニストにも曝露されている可能性がある。そこで、昜分解性AhRアゴニストを含むGPC処理溶液を用いたCALUXアッセイも実施し、多様なAhRアゴニストの解析を試みる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実質9月からの研究開始となり、ほぼ分析機器やアッセイの条件検討に時間を要したため、結果として経費を抑えられた。次年度からは、数多くの試料に対してスクリーニング分析およびアッセイ評価を実施する計画であることから、専用器具や有機溶媒、そして試薬などの消耗品が必要となる。また、測定機器の消耗品部品における定期的な交換も必須となり、とくにスクリーニング・定量分析に使用するGC×GC-HRTOFMSとGC-HRMSは、高精度・超微量測定が可能な反面、性能を維持し安定稼働させるには消耗品部品の交換だけでなく分析部の定期的な調整費も必要であるため、本研究費を活用する計画である。さらに、研究成果を国内外の学会やシンポジウムで発表するための旅費、そして国際学術誌に論文として投稿する際の印刷費等にも使用する予定である。
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