研究課題/領域番号 |
19K22916
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
保高 徹生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (60610417)
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研究分担者 |
武田 晃 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 主任研究員 (10715501)
辻 英樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 研究員 (50719599)
矢ヶ崎 泰海 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 研究員 (70446392)
森 裕樹 九州大学, 農学研究院, 助教 (90404061)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 生物利用可能量 / 放射性セシウム / カリウム / 土壌 / リター / 底質 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射性セシウム(rCs)、カリウム(K)を対象として実土壌での間隙水濃度や対象元素のの移動性評価方法として、フィルターおよび対象物質の吸着材(銅置換体プルシアンブルー担持不織布(以下、Cu-PB)等)を組合せた装置を土壌に密着させ、一定期間接着後の分析により生物利用可能量を推定する方法の構築を目的とした。 1)r-Cs農用地:農地土壌中rCsの土壌中拡散速度に基づいた生物利用可能量を評価するため、Cu-PBとフィルターを装填する拡散速度定量装置を試作し、一定の精度を確保した。福島県内のrCsの作物移行程度の異なる農地土壌を用いて、開発装置の精度評価を実施し供試可能とし、Cu-PBに補足されたrCsの評価手法を検討した。 2) r-Csダム湖底質:ダム湖底質に含まれる生物利用可能rCs量の評価法として、溶存態rCsの吸着材であるCu-PBを用いたrCs抽出試験の装置設計について検討を行った。福島県内のダム湖心部の底質を用いた抽出試験の結果、48時間振盪試験では約0.6%が水抽出され、静置抽出試験では約0.02%が抽出された。また、Cu-PBのCs吸着容量を評価しU8容器でCu-PBのrCs回収量評価が可能であることを示した。 3) r-Csリター:リター中のrCsの生物利用可能量を推定するため、既実施のリターからのrCs、Kのタンクリーチング試験の結果を用いて、拡散律速モデルに基づく生物利用可能量の推定方法を構築するとともに、Cu-PBのリター埋設試験を開始した。 4)K農用地土壌:土壌中Kの生物利用可能量の評価のため、複数の土壌に対して,既存の方法(酢酸アンモニウム抽出法,熱硝酸抽出法,Na-TPB抽出法)、および、新規に検討する方法(K選択性マンガン酸化物との接触法)で分析した。また、土壌からのK吸収量測定のための栽培実験の予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究予定と比較して、すべてのサブテーマに関して順調に進んでいるため、概ね順調に進展している、とした。具体的には、各サブテーマで、本年度、実現場に適用可能な手法開発が概ね完了し、次年度の実証試験に進める状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
1)r-Cs農用地:2019FYに収集した作物移行程度の異なる農地土壌試料を対象に、土壌中放射性セシウムの拡散速度の評価を進め、拡散速度と土壌の理化学性・鉱物学的特性およびrCs移行量の関係を解析する。この結果を従来の化学抽出法によるものと比較することにより、吸着材とフィルターを用いた生物利用可能量評価法の特性や精度について評価する。2019FYに検討した手法を、放射性セシウムを含んだ農地土壌試料に適応し、土壌中の生物利用可能量評価への実用性を検討する。 2) r-Csダム湖底質:2019FYに実施した室内試験に加えて、銅置換体プルシアンブルー担持不織布と底質試料を接触させる設計での137Cs抽出試験を実施し、各試験系での137Cs抽出率の比較を行う。さらに室内試験に供したダム湖底質試料の採取地点に不織布装置を直接設置し、現場で底質中の水溶性137Cs量を直接評価できる装置開発の検討を行う。 3) r-Csリター:リター中のrCsの生物利用可能量の推定モデルの高精度化を進めるとともに、Cu-PBを用いた現場実証試験をすすめ、Cu-PBを用いた現場でのリターの生物利用可能量評価の実用性を検討する。 4)K農用地土壌:土壌および評価法による土壌カリウム量の違いを,土壌理化学性の点から解析する。栽培実験を行い,植物のカリウム吸収量を土壌の各カリウム評価法と比較して,土壌カリウムの生物利用可能性評価法としての妥当性を議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の関係で2月、3月の学会や調査が中止になったことから、次年度使用額が生じた。
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