有機性廃棄物の処理と電気の生産を同時に行うことのできるシステムとして微生物燃料電池(MFC)が注目を集めている。現在のMFCでは、カソードでの電流消費反応には白金などの化学触媒を利用している。一方、細胞外から直接電子を取り込み、化学物質を還元する細菌の存在が知られており、このような細菌を用いることによって、カソードでの電流消費反応にも微生物を用いたバイオカソード型MFCを構築することが可能と考えられる。本研究は微生物燃料電池を改良し、カソード側でも微生物反応を利用して有害物質を処理するバイオカソード型MFCを開発することを目指すものである。 本年度は、T. denitrificansを用いた電気培養を行い、印加電圧を変化させて、硝酸および亜硝酸イオン濃度の変化と消費電流量を追跡し、カソード側の運転条件の最適化を行った。-300 mVの電圧を印加して電気培養を行うと硝酸イオンが消費されるものの、亜硝酸イオンが蓄積した。一方、-100 mV および -200 mVの電圧を印加する電気培養を行うと亜硝酸の蓄積が生じずに硝酸イオンの消費が進行した。特に-200 mVにおける電気培養では硝酸イオン濃度が最も低くなり、先行研究よりも優れた硝酸除去率を示した。これらの結果から、バイオカソード型MFCを安定して運転させる条件として、カソード側の印加電圧が-200mV付近となるように制御することが必要であることが初めて解明された。 高能力電流消費菌の候補として、前年度獲得した硝酸還元能力を有する硫黄酸化細菌の単離株(Sulfurimonas属に帰属)の培養条件を検討したが、この細菌を安定的に増殖させることは困難であった。
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