研究課題/領域番号 |
19K22926
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | CO2削減 / 構造体触媒 / メタン化反応 / オートメタネーション / CO2資源化 |
研究実績の概要 |
本研究は、産業プロセスから排出されるCO2を、空気成分が混在したまま常温常圧下で効率的かつ大量にCH4に変換する触媒反応場を創製することを目的としている。そして、この物質変換場の触媒作用機構について詳しく調査し、CO2資源化技術に関した新しい学理の開拓に挑戦するものである。採用する触媒反応システムは、高伝熱性と低圧力損失性を特長とする構造体触媒反応場をベースとした。今年度の研究推進から、以下の研究成果を得た。 1.CO2のメタン化反応用の触媒成分として、高い触媒活性と高いCH4選択性を示すNi/CeO2成分を選定した。そして、構造体化における基材形状をHoneycomb形やSpiral形、Plain形、Stacked形、Segment形で検討し、物質移動と熱移動の促進によるメタン化速度の加速効果を明らかにした。また、その際の促進効果を総括物質移動係数と総括伝熱係数の序列として表現することができた。 2.Spiral形Ni/CeO2触媒によるCO2のメタン化反応において、原料ガス中への1~11vol%酸素の共存が効率的なメタン化を実現することを明らかにした。この変換機能は、外部加熱を必要としない室温域でも作動可能である。これまでにない現象であり、auto-methanationと名付けた。なお、O2による生成CH4の燃焼反応や触媒酸化による劣化が想定されたが、いずれも観察されなかった。CO2のメタン化プロセス設計に大きな技術変革をもたらす学術データであると考えられた。 3.Ni/CeO2構造体触媒上のauto-methanation現象は、外部加熱のない状態で60時間以上継続し、触媒活性やCH4生成の選択率は変化しなかった。反応後の触媒の比表面積が多少低下しただけで、その他の因子に大きな変化は見られなかった。実用性の高い触媒システムであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度の研究では、メタン化用構造体触媒の機能性向上要因を明確にするため、構造体様式の変化による総括物質移動係数と総括伝熱係数の推算に成功し、その序列と活性が相関性を示すことを明らかにした点が大きな成果の一つである。また、Spiral形Ni/CeO2触媒によるCO2のメタン化反応において、共存酸素濃度1~11vol%で室温域でも効率的で高いメタン変換機能を示すことを明らかにした点も重要である。最大11vol%の酸素は、産業プロセスからの排ガス組成中の酸素濃度をカバーできる。そして、本触媒系が長期試験に安定な触媒特性を示したことも、工業化を図る上での優位性を示すデータである。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究実施内容は、以下の通りである。 1.酸素ガス共存下での選択的なメタン化反応(auto-methanation)の推進について、工業的な利用と展開の観点から、金属成分や担体種成分を変えた他の触媒系による発現の有無を調査する。具体的には、2019年度に選定したNi/CeO2系をベースとして、金属種をRuに、担体種をZrO2、Y2O3、Al2O3、MgO、SiO2などに変化し、そのメタン化特性を評価する。 2.上記で得られたメタン化反応特性と各触媒の物性特性との相関性について検討する。触媒上でのメタン化反応機構に関した報告例や実験データをもとに、室温作動のメタン化反応の発現要因について調査する。 3.産業プロセスから実際に排出されるガス処理を想定した原料供給量の増加が、Ni/CeO2構造体触媒に及ぼす影響について調査する。その際、構造体形状の変化とメタン化反応特性の関係性に留意し、物質移動特性と熱移動特性、およびメタン変換速度とのバランスを考慮した操作の最適性に関した技術的知見を集積する。 4.上記3で得られる処理量とメタン変換機能におけるプロセス強化に関した指針の提言を行なう。また、経済的なコストパフォーマンスの推算を実施し、本システムの有効性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の研究推進から、開発した触媒システムが産業プロセス排出CO2の資源化に非常に有効であることが判明し、実レベル(大型装置)での触媒システム特性を研究者の増員により評価する必要性が生じた。そこで、繰り越し予算とR2年度予算の一部で研究員を雇用し、さらなる研究推進を図ることを計画した。
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