本研究は、産業プロセスから排出されるCO2を、空気成分が混在したまま常温常圧下で効率的かつ大量にCH4に変換する触媒反応場を創製することを目的とする。そして、この物質変換場の触媒作用機構について詳しく調査し、CO2資源化技術に関した新しい学理の開拓に挑戦するものである。採用する触媒反応システムは、高伝熱性と低圧力損失性を特長とする構造体触媒反応場をベースとした。今年度の研究推進から、以下の研究成果を得た。 1.Ru/CeO2触媒を用いた場合、酸素ガス共存下でのメタン化反応は外部加熱のない室温域で自立的に起動することが明らかとなった。プロセス運転における経済的なメリットがある。 2.Ru/ZrO2触媒とRu/Al2O3触媒を用いた場合、酸素共存下において室温域での反応起動は見られなかった。しかし、設定温度75℃においてメタン化反応が起動した。用いる担体種の変化が酸素ガス共存下のメタン化特性に大きく影響を及ぼすことが結論された。 3.Ru/CeO2触媒上では酸素欠陥性が高く、Ce3+種の存在が多く確認できた。酸素空孔サイトの存在は、H2燃焼反応を促進することが判明しており、このサイトの存在が室温域でのメタン化反応の自立的起動性に重要な因子であると考えられた。 4.Ru/ZrO2触媒とRu/Al2O3触媒では、メタン化ガスの供給速度と共存酸素量を変更することで室温域での起動が可能であることがわかった。また、Ru/CeO2触媒は還元処理温度を低温側にシフトすることが可能であり、特に100℃以下の還元処理温度でもメタン化反応を室温域で起動できることを明らかにした。このときのRu成分の金属状態はXPS測定によって確認した。 5.酸素ガス共存下のメタン化反応の熱力学的な有効性を検討し、通常のメタン化システムよりも優位であることを結論とした。
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