研究課題
本研究では、地球規模での物質循環から環境浄化・ヒトの健康に至るまで、様々な領域で関与している微生物生態系の制御を最終目的とし、その形成メカニズムの解明を目的としている。自然界における微生物生態系は、多種多様な微生物の相互作用により構成されており、また、それ故に形成メカニズムを直接的に取り扱うことは現時点において極めて困難である。そこで本研究では、形成メカニズムの理解に向けて、3種類の微生物による人工モデル微生物生態系を構築し、分子生物学的および数理学的解析を実施した。昨年度までに、供試菌株の増殖特性および供試菌株間の相互作用関係を組むこんだ数理モデルをロトカ・ボルテラ方程式から構築し3菌株の共存解を求めた。その結果、5000点以上の共存解が存在し、単一炭素源下における異種微生物共存に相互作用が必須であることを示唆した。本年度、更なる検討の結果、近接した共存点でさえ、共存成立時の相互作用が異なること、また、実際の細胞密度や代謝は厳密に保たれることがほぼ無いことから、微生物の共存には、相互作用の変化が重要であることが提示された。一方、モデル式の限界として、3菌株全てが初発炭素源を利用する前提であり、微生物間の代謝ネットワークは数理的に表現されていない。そこで、実際の培養系から時系列的に菌密度モニタリングおよび培養上清を用いた菌株間相互作用の解析を実施した結果、群集構造の変遷時に、菌株間相互作用が変化することが実測された。間接的ではあるものの、微生物複合系における微生物間の相互作用動態を解析した事例は世界的に見ても希少であり、微生物間相互作用の揺らぎおよび変化、そして個体群動態変化の誘発を実験的に示した。現在、時系列サンプルのトランスクリプトーム解析を実施しており、微生物群集構造を微生物間相互作用に基づく代謝レベルでの理解が進むものと期待される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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