研究課題/領域番号 |
19K22931
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
陸田 秀実 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (80273126)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 摩擦発電 / 剥離発電 / 環境発電 / 誘電エラストマー |
研究実績の概要 |
本研究は,既往研究でその発電性能が明らかとなっている圧電材(Piezoelectric Nanogenerator, PENG)を用いたさらなるエネルギーハーベスティング技術に基づいて,圧電材(Piezoelectric Nanogenerator, PENG)と誘電性物質(Triboelectric Nanogenerator, TENG)の双方のメリット・デメリットを相互補完・融合したPENG-TENGハイブリッド型エネルギーハーベスティング(Energy Harvesting, EH)に関する基礎研究を行った.
今年度は,接触・剥離現象による積層型TENGの出力特性を検証した.TENGの発電能力向上に向けたデバイス構造として,接触・剥離速度を保持しつつ,1ストローク間の接触・剥離回数を増加することが可能な積層型構造を有するTENGを新たに製作した.なお,本デバイスは,1ストローク間で4つの誘電性物質が接触・剥離する構造様式を有している.加振機の台座に積層型TENGの下部,検力部を上部に装着し,加振機の台座を振動させることで,積層型TENGの鉛直方向のデバイス高さを変化させた.加振機の台座と検力部との初期間隔=7~30 mm,加振周波数=10~30 Hz,加振振幅=2.0~6.0 mmの各条件において,出力電圧,振動変位および圧縮荷重を計測した.その結果,積層型TENGの出力電圧と振動変位,振動速度の時系列特性が明らかとなった.また,出力電圧と振動変位の時系列変化は非常によく一致しており,振動試験において得られた単層型TENGの出力電圧傾向と異なっていた.このことから,積層型構造にすることによって発生電圧のタイミングが移行していると考えられる.また,その出力電圧は約6.0V程度となっていた.前節の単層型TENGの出力電圧傾向と比較すると,積層型構造にすることで,単位面積当たりの出力電圧をほぼ線形的に向上させることができることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では,2019年度に革新的な環境発電デバイス(F-TENG)を開発し,その諸特性(発電メカニズム,キーパラメータの抽出など)を解明した.2020年度は,アセンブリを製作し,最終的にフィールド試験を実施する予定であった.しかしながら,コロナウイルス感染拡大に伴い,外出規制が強まったため,フィールド試験が出来なくなった.そこで,本研究期間を延長し,フィールド試験を行うことで,本発電バイスの有用性を実証する.
これまでに,TENGの発電能力向上に向けたデバイス機構の設計・開発及びその基礎出力特性の解明,また振動試験によるPENG-TENGハイブリッド型発電デバイスの発電・力学特性について基礎的研究を行った.その結果,TENGを積層構造にすることで発電能力を線形的に向上させることができる.また,PENG-TENGハイブリッド型デバイスは出力特性を相互補完できるため,エネルギー獲得レンジの広域化が可能であることが分かった.
今後は,フィールド試験により,上記の基本出力特性を実証する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,PENG-TENGハイブリッドデバイスの出力特性を明らかにするための実験準備を進める.実験装置は,加振機の台座に積層型TENGの下部,PENGの自由端に上部を装着する.振動振幅によって積層型TENGのデバイス高さが変化し,誘電性物質が接触・剥離すると同時にPENG自由端に外力が作用し,デバイス変形が発生する構造様式である.加振機の台座とPENGを支える台座との初期間隔=0~30 mm,加振周波数=5~20 Hz,加振振幅=2.0~6.0 mmの各条件下において,出力電圧,振動変位,PENG自由端変位を計測している.今後は,実験実施,そのデータ結果の整理を行うとともに,PENG-TENGハイブリッドデバイスの出力特性を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では,2019年度に革新的な環境発電デバイス(F-TENG)を開発し,その諸特性(発電メカニズム,キーパラメータの抽出など)を解明した.2020年度は,アセンブリを製作し,最終的にフィールド試験を実施する予定であった.しかしながら,コロナウイルス感染拡大に伴い,外出規制が強まったため,フィールド試験が出来なくなった.そこで,本研究期間を延長し,残額を使用することでフィールド試験を行い,本発電バイスの有用性を実証する.
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